「楽天は倒産」と叩かれたモバイル、800万回線で生き残った

吹き荒れる突風の中で倒れずに直立し、穏やかな波紋を放つシンプルな通信鉄塔の比喩 話題

2024年2月1日、楽天グループが利回り12%超のドル建て社債を発行した際、当サイトは「楽天G、約2650億円のドル債発行へ-利回り12%超は日本企業最高」という見出しを取り上げた。スレには「終わりの始まり」「完全な延命」「バラバラに解体されて身売り」という声が並んだ。

あれから2年半。楽天モバイルは契約数800万回線を突破し、2024年12月にはMNO参入後初の単月EBITDA黒字化を達成して生き残った。当時ここに並んでいた見出しを1本ずつ振り返り、何が当たり、何が外れ、当サイトがどこで煽りすぎたのかを検証する。当サイト自身が見出しで外したものも包み隠さず入れる。

なお、その後の公式発表では、楽天モバイルの全契約回線数は2025年12月末に1,001万回線、2026年6月末に1,075万回線となり、2025年度には携帯キャリア事業参入後初の通期EBITDA黒字化を達成している(楽天グループ・2025年度通期決算、2026年度第2四半期決算)。
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2021年〜2024年、この見出しが並んでいた

自前の基地局整備による巨額の設備投資と、契約獲得の苦戦。楽天の携帯事業参入は、開始当初から常に「撤退か存続か」の議論に晒されていた。当サイトが報じた見出しから、結果の確認できる9本を時系列で並べる。

日付 当時の見出し
2021-03-13 楽天が中国テンセントグループなどから出資受け入れ 2400億円規模 モバイル事業強化のため
2023-01-23 【通信】楽天モバイル、郵便局内200店舗削減 ネット契約に誘導
2023-01-31 【楽天】三木谷社長「モバイル!モバイル!モバイル!モバイル!」赤字続きのモバイル事業強化へ法人契約プラン 出店者にも強く加入要請
2023-04-20 【携帯】「プラチナバンド」新規割り当てへ 楽天モバイルに追い風
2023-06-03 【スマホ】楽天モバイル最強新プラン、エリアやつながりやすさが改善していないことが明らかに
2023-10-24 【携帯】楽天にプラチナバンド 総務省が割り当て決定
2023-10-30 【通信】楽天モバイルが500万回線突破 三木谷氏「サービス向上に向け取り組む」
2023-11-10 【企業】楽天、赤字2084億円 携帯事業の不振続く 23年1~9月期
2024-02-01 楽天G、約2650億円のドル債発行へ-利回り12%超は日本企業最高

このうち、すでに結果が判明している論点を順に検証していく。

【当たり】プラチナバンド獲得と運用開始は、計画通り実現した

2023年4月に「プラチナバンド新規割り当てへ」、そして10月に「総務省が割り当て決定」と報じられた際、ネット上では「形だけの割り当て」「基地局を整備する資金がない」「実用化は何年も先」といった冷笑的な意見が目立った。

しかし結果は、総務省による認定から8か月後の2024年6月27日に商用サービスを開始した。

時期 起きたこと
2023年8月29日 総務省が700MHz帯の特定基地局開設計画の認定申請受付を開始
2023年10月23日 総務省が電波監理審議会の答申を経て楽天モバイルへ700MHz帯(3MHz幅×2)を認定
2024年4月30日 楽天モバイルが700MHz帯の試験電波発射を開始
2024年6月27日 プラチナバンド(700MHz帯)の商用サービスを開始(700万回線突破と同時発表)

既存の1.7GHz帯基地局設備を活用することで迅速な立ち上げを実現した。割り当て幅が3MHz幅×2という狭帯域であるため「大手3社と同等の大容量通信はできない」という技術的な制約は残るものの、「電波が吹けない」「サービスが始まらない」という外野の悲観論は完全に外れた。

【外れ】「楽天倒産・解体身売り」は起きず、800万回線で踏みとどまった

2024年2月1日の「ドル債発行へ 利回り12%超は日本企業最高」では、額面利率11.250%、利回り12.125%という高利回りが報じられた。ネット上では「ジャンク債祭り」「町工場のサラ金借入」「バラバラに解体されて身売り」と、倒産や事業売却を前提とするコメントが溢れた。

だが、楽天グループは解体も身売りもせず、モバイル単体の赤字を大幅に縮小させて踏みとどまった。

指標 2023年(危機時) 2024年通期決算
契約回線数 約500万回線(2023年8月) 830万回線(2024年12月末時点)
モバイル単体EBITDA 毎四半期で大幅赤字 2024年12月に単月黒字化達成(23億円)
モバイル営業損失 ▲3,145億円(2023通期) ▲2,089億円(前年比1,056億円改善)
グループ連結Non-GAAP営業損益 ▲1,530億円(赤字) 70億円の黒字(通期黒字化達成)

楽天銀行の上場や楽天証券株の一部売却、そして高利回りを甘受したドル債発行によって資金繰りの崖を乗り切り、回線数の増加とコスト削減によって損益分岐点へと近づいた。12%超のドル債発行は確かに財務上の危険な賭けだったが、「これで終わり」ではなく「これで息を繋いで黒字に持ち込んだ」のが事実だった。

【当サイトの外れ】「改善していないことが明らかに」— わずか2日のレビューで断定した見出し

2023年6月3日、当サイトは「【スマホ】楽天モバイル最強新プラン、エリアやつながりやすさが改善していないことが明らかに」という見出しを立てた。

「Rakuten最強プラン」が開始されたのは2023年6月1日である。開始からわずか2日後の外部レビュー記事1本を引いて「改善していないことが明らかに」と断定した。

新ローミング協定の移行途上における特定地点の測定結果を、プラン全体の永続的な失敗として見出しに仕立てた。
KDDIのパートナー回線における月間5GB制限撤廃や繁華街での回線切り替えは、全国で順次浸透していくネットワーク改修だった。開始2日目の部分的なパケ詰まりを「最強のハッタリプラン」と決めつけた見出しは、検証ではなく願望の引き写しだった。

実際には、最強プラン投入を機に解約率(チャーンレート)は低下し、月次契約純増ペースは加速した。2023年8月に500万回線、2024年6月に700万回線、同年10月に800万回線と契約数が伸び続けた原動力は、まさにこの最強プランだった。当サイトが外したのは事実そのものではなく、初期のつまずきを「決定的な結末」に見せかけた早合点だった。

【不正確】「テンセントから出資受け入れ2400億円」— 主語と数字をすり替えた見出し

2021年3月13日の当サイト見出し「楽天が中国テンセントグループなどから出資受け入れ 2400億円規模 モバイル事業強化のため」。

この見出しを読むと、中国の巨大IT企業テンセントが楽天に2,400億円を出資したように読める。スレ内でも「乗っ取られる」「中共の支配下に入る」「外為法で取り締まれ」といった反応が殺到した。

実際の出資総額約2,423億円のうち、主たる出資者は約1,500億円(8.32%)を出資した日本郵政だった。
テンセント子会社(Image Frame Investment)の出資額は約657億円(3.65%)、米ウォルマートは約166億円(0.92%)である。出資比率でも金額でも日本郵政の半分以下にすぎないテンセントを主語に据え、全体の調達総額「2400億円」を見出しに直結させた。

さらに、安全保障上の懸念についても国会で政府の見解が示されている。

「コア業種に属する事業に関しまして、取締役会等に自ら参加しない、会社に期限を付して回答等を求めて書面で提案を行わないとの上乗せ基準の遵守を前提に、免除制度の利用を可能としてございます」
— 船橋利実財務大臣政務官(2021年5月14日 衆院内閣委員会)
テンセントの出資は役員を派遣せず、非公開の技術情報にアクセスせず、経営関与を行わない誓約を前提とした「純投資」として外為法の事前届出免除基準が適用され、事後報告と政府当局による監視が行われた。
当サイトは、最も読者の危機感を煽りやすい「中国テンセント」を主語に選び、総額の数字を並べることで「中国資本による2400億円の買収劇」という虚像を見出しで作った。

【当たり】郵便局内ショップの大量削減— リアル店舗の縮小は進んだ

2023年1月23日、当サイトは「【通信】楽天モバイル、郵便局内200店舗削減 ネット契約に誘導」と報じた。日本郵政との資本提携時に大きな柱としてアピールされていた郵便局内の窓口ショップ(約280局)から、約200局を一挙に撤退させる方針である。

固定費の大きい対面店舗を畳み、オンライン契約へシフトさせる方針は計画通り実行された。
郵便局店舗の維持コストを切り離したことは、その後の販管費圧縮とEBITDA改善に直接寄与した。一方で、「日本全国2万局の郵便局網と連携する」と掲げたリアル連携の構想が早期に挫折したことも同時に意味していた。見出しの事実関係としては完全に当たりである。

店舗網を縮小しても、三木谷社長自ら「モバイル!モバイル!モバイル!」と叫んで法人営業に走り、楽天市場の出店者への加入要請やグループ全社動員を進めたことで、契約の獲得チャネルはオンラインと法人へ切り替わっていった。

答え合わせ一覧

当時の見出し・言われていたこと 判定
プラチナバンドの割り当てと商用化 ◎ 当たり(2024年6月に商用サービス開始)
契約数は500万回線で頭打ち・伸びない × 外れ(2024年末に830万回線到達)
利回り12%ドル債で楽天倒産・身売り解体 × 外れ(2024年12月に単月EBITDA黒字化)
最強プランでつながりやすさは改善せず × 外れ(開始2日のレビューを恒久化した見出し)
テンセントから2400億円出資で乗っ取り △ 不正確(郵政1500億・テンセント657億の純投資)
郵便局内ショップの大量削減と店舗撤退 ◎ 当たり(200局撤退で固定費削減を実行)

6つの論点のうち、2本が当たり、3本が外れ、1本が不正確。ネット上で最も熱狂的に語られた「倒産」「解体」「乗っ取り」といった破滅シナリオは、ことごとく外れた。
ただし、楽天モバイルが安全圏に入ったわけではない。単月EBITDAの黒字化を果たしたとはいえ、過去数年で積み上げた社債の償還負担は重く、獲得したプラチナバンドも3MHz幅という限られた帯域にすぎない。「潰れなかった」ことと「通信大手3社と肩を並べた」ことは全く別の命題である。
それでも、2023年から2024年にかけてネットを覆っていた「今年中にも身売り」「ハッタリの最強プラン」という嘲笑に比べれば、現実ははるかにしぶとかった。外野が「もう無理だ」と騒いでいる間に、当事者はなりふり構わずドル債を刷り、郵便局を畳み、800万回線まで泥臭く積み上げた。それがこの答え合わせの結末である。

出典

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