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【試算】ホルムズ海峡が封鎖されたら、日本のガソリンはリッター幾らになるのか — 4シナリオ×主要シンクタンクの試算を集約

ホルムズ海峡封鎖シナリオと日本のガソリン価格 政治・行政

「ホルムズ封鎖でガソリン1Lが200円超える」——IRGCを巡る情勢が緊迫するたびにSNSに流れてくる話だ。IRGCがイラン大統領・外相を黙らせている模様二・二六事件との構造比較3つの予測シナリオと当サイトでも連続で扱ってきたが、「で、日本人の財布に幾ら刺さるのか?」という肝心なところを一回まとめておく必要がある。

結論を先に置く。ドバイ原油がいまの60ドル台から110ドルまで上がるだけで、補助金込みでもガソリン1Lは200円前後(ニッセイ基礎研究所試算)。完全封鎖で140ドル水準まで飛べば、日本総合研究所は「GDPを3%押し下げる」試算を出している。短期では備蓄で粘れるが、その備蓄は有限で、しかも世界有数の中東依存国である日本は、OECDで最も脆弱な位置にいる。

本稿では、①なぜ日本はOECDで最もホルムズに弱い国なのか、②1973年・2019年・2024年の先例、③4つの封鎖シナリオで日本のガソリン価格を試算、④備蓄242日という数字の読み方、⑤代替ルートは現実的か、の順で整理する。数値は全て公的資料と主要シンクタンク試算から取った。


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まず前提 — 日本はOECDで最もホルムズに脆弱

ネット上では「日本は中東依存を下げてきた」という主張もよく見かけるが、数字を見る限りその逆である。資源エネルギー庁「エネルギー白書」および関連統計から、最新の比率はこうなっている。

🛢️ 日本の原油輸入:中東・ホルムズ依存度(2023〜2024年度)
指標 比率 出典
原油の中東依存度(2023年度) 94.7% 資源エネルギー庁
原油の中東依存度(2024年度) 95.9% 日本エネルギー経済研究所
うちホルムズ海峡経由 約9割 資源エネ庁 / グリーンピース推計
LNG(参考) 中東依存は約1割 JETRO
主要仕入先(1位・2位) サウジ+UAEで約8割 財務省貿易統計

単純に言うと、「日本に入ってくる原油のうち約85%が、ホルムズ海峡1本を通って来ている」。同じ中東依存国である韓国や台湾もホルムズ依存度は高いが、韓国・米国・中国は中東比率を下げる多角化を進めた一方、日本は過去10年で逆に中東依存が高まっている(2010年代前半は85%前後だった)。これが、国際エネルギー機関の評価で日本がOECD加盟国で最もホルムズ封鎖に弱い国と位置づけられる理由だ。


先例①:1973年 第1次オイルショック — 4年でガソリン2倍

「封鎖で価格が跳ねる」とはどの程度か。過去の最大級の事例が1973年の第1次オイルショックだ。きっかけは第4次中東戦争(10月6日)に伴うアラブ産油国のイスラエル支援国向け石油禁輸・減産決定。ENEOS石油便覧によれば、

📜 1973年ショックの数字

・原油公示価格(アラビアンライト):1973年1月 2.59ドル → 1974年1月 11.65ドル(4.5倍)
・日本のガソリン小売:1973年 60円台 → 1977年 120円台(約2倍)
・消費者物価指数:1974年に年率23%上昇(「狂乱物価」)
・トイレットペーパー騒動:パニック買いが全国に波及

ポイントは「原油価格の4.5倍」と「ガソリン価格の2倍」のギャップだ。これは日本のガソリン価格の約6割が税金で、原油価格が直接響くのは残り4割(原油コスト約2割+精製・販売約2割)という構造による。原油が4倍になってもガソリンは2倍にとどまるというクッションがある一方、税金分は下がらないので下方硬直性もある。


先例②:2019年タンカー攻撃 — 瞬間的に原油価格15%急騰

2019年6月13日、オマーン湾で日本企業所有を含むタンカー2隻が攻撃された事件では、ブレント原油が1日で4%超上昇し、その後の2週間で約15%上昇した。このとき日本政府は備蓄を動かさずに乗り切ったが、「攻撃の閾値を下回る嫌がらせ」だけで市場は反応するという事実が示された。2024年後半〜2026年春のIRGC由来の緊張でも同じ反応パターンが出ている。


先例③:2026年4月(現在進行形)— 10日で65ドル→120ドル

そして現在進行形の事例。三菱UFJ銀行経営企画部 経済調査室の2026年4月3日付レポートと各社報道によれば、IRGCがホルムズ海峡の事実上封鎖を示唆して以降、原油価格は10日間で65ドル→120ドルへ急騰、4月7日には112.95ドルで引けた。日本のガソリン小売は、経産省4月発表169.5円/L(4/20、補助金35.5円/L込み)。補助金を剥がした理論価格は既に205円前後に達している。


4つの封鎖シナリオ × 日本のガソリン価格

4シナリオ比較チャート — 原油・ガソリン・GDP
図:4つの封鎖シナリオにおける原油価格・ガソリン小売・GDP影響(出典: ニッセイ基礎研 / 日本総研 / 三菱UFJ / 野村 を総合)

ニッセイ基礎研究所、日本総合研究所、野村證券、三菱UFJ銀行の公表試算を総合して、4つのシナリオでガソリン価格を推定する。前提はドル円150円固定、補助金(現状35.5円/L)継続、税制は据え置き。

⛽ 封鎖シナリオ別ガソリン価格試算(1Lあたり)
シナリオ ドバイ原油 ガソリン小売 GDP影響
S0 平時(2025年末) 60〜70ドル 160〜170円 ±0
S1 一時的な緊張
タンカー攻撃・威嚇
90ドル 約180円 -0.1〜-0.2%
S2 部分的妨害
機雷・遅延・通過制限
110ドル 約204円
ニッセイ基礎研
-0.6%
三菱UFJ
S3 完全封鎖(短期)
1〜2カ月
140ドル 約240円 -1%
日本総研
S4 完全封鎖(長期)
3カ月超
180ドル+ 300円級
延長試算
-3%
日本総研

出典: ニッセイ基礎研究所日本総合研究所/三菱UFJ銀行経済調査室(2026年4月3日)/野村證券ウェルスタイル

最も現実味があるのがS2(部分的妨害で原油110ドル)だ。ニッセイ基礎研究所が公表した数式ベースの試算では、この条件でガソリン小売は204円/Lに達する。2024年春時点の平均167.5円から+36円、約22%の上昇。1ヶ月20L給油する世帯で月額+720円、年間+8,640円の負担増になる。

S3(完全封鎖短期)は1980年代以来の水準で、過去実績から言えば便乗値上げ・買い占め・ガソリンスタンドの行列まで再現される可能性がある。


「備蓄242日分」の本当の意味

「備蓄があるから大丈夫」という声もよく聞くが、数字をちゃんと読むと少し景色が変わる。資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」(令和7年6月)によると、2025年4月末時点で——

🏭 日本の石油備蓄(2025年4月末)
区分 日数
国家備蓄 4,125万kl 147日
民間備蓄 2,660万kl 95日
合計 6,785万kl 242日

備考:IEA基準では203日分相当。世界最大級の備蓄日数。

「242日分」は世界でも最大級の備蓄量で、物量的にはホルムズ封鎖が3カ月続いても凌げる計算になる。ただし、この数字はいくつか注釈が必要だ。

注釈1:備蓄は”凍った資産”。一気に放出すれば底をつく。放出ペースを絞れば半年はもつが、その間の価格高騰は防げない(現に2021年の備蓄放出では効果限定的だった)。

注釈2:備蓄の構成物。国家備蓄の多くは原油であり、それを精製する製油所の稼働能力が実効能力の天井になる。日本の製油所能力は2005年以降ほぼ半減しており、平時の消費量を精製するのがやっとという見方もある。

注釈3:心理的効果。過去のショック時、備蓄の「物量」より先に「買い占め」「便乗値上げ」が市場を動かした。1973年のトイレットペーパー騒動はほぼ純粋な心理的連鎖だった。


代替ルートはあるのか — 現実的には3つしかない

ホルムズ海峡を通らずに原油を運ぶ代替ルートは、現実的に3つ。

🚢 ホルムズ迂回オプション
ルート 日当り能力 限界
サウジ 東西パイプライン(紅海経由) 約500万b/d フーシ派によるイエメン側攻撃リスク
UAE フジャイラ港(ホルムズ外側) 約180万b/d 能力は限定、UAE生産量の全量は流せない
米国・豪州・アフリカ・ロシアからの長距離調達 理論上無制限 輸送距離・コスト2〜3倍、契約切替に半年

現実問題、短期(数週間)では代替ルートは機能しない。数ヶ月〜1年単位のスパンでようやく調達先を組み替えられるが、その間の価格高騰は市場が決める。代替ルート構築の間、備蓄と補助金で時間を買うしかないというのが実務の構図である。


まとめ — 「リッター幾らか」の現実解

以上を踏まえると、「ホルムズ封鎖で日本のガソリンはいくらになるか」への現実的な答えは以下になる。

💡 シナリオ別現実解

S1(威嚇・散発的攻撃):180円前後。現在の補助金体制で十分吸収可能
S2(部分的妨害)200円超えが確定的。家計月+700〜1,000円
S3(完全封鎖・数週間)240円、便乗値上げと行列
S4(長期封鎖)300円級+物流寸断+GDP-3%、1973年の再来

S1〜S2は2026年春の現時点で既に半ば現実化している。補助金35.5円/Lという異常な水準で辛うじて170円を維持しているだけで、補助金を剥がした理論価格は既にS2水準の205円に届く。IRGCが「示威行動」を続ける限り、S2付近から下りにくい。

S3以降に進むかどうかは、アメリカ第5艦隊による掃海・ホルムズ再開の成否、イラン国内の権力闘争(二・二六事件と中国PLAの類推で見た構造)、そしてサウジ・UAEがフジャイラとパイプラインをどこまで稼働させるか——この3つで決まる。

「日本人の財布の話」としては、当面はS2到達前提で組むのが現実的ということになる。200円台ガソリンの時代が来るかどうかではなく、いつ来るか、どれくらい続くか、だ。


出典・参考:
nippon.com「石油の中東依存度95%超」(資源エネ庁データ)
JETRO「日本のLNG輸入量のホルムズ海峡依存度」
資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」(令和7年6月)
ニッセイ基礎研究所「ホルムズ海峡封鎖でガソリン価格はどうなる?」
日本総合研究所「イスラエル・イラン紛争は原油価格を押し上げ」
三菱UFJ銀行「ホルムズ海峡の事実上封鎖と世界経済への影響」(2026年4月3日)
ENEOS石油便覧「石油危機(オイルショック)と石油高価格の時代」
福井新聞「最新ガソリン価格」(2026年4月15日)
グリーンピース「日本はホルムズ海峡危機に最も脆弱」


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エネルギー危機の深層 ――ロシア・ウクライナ戦争と石油ガス資源の未来 (ちくま新書 1748)

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コメント

  1. すでに封鎖されてるから仮定法は相応しくない、文法的に問題あり
    それに市場が既に回答してるはず
    問題はもう一歩進めて、解決策や対応策になる

  2. 扇動するための様な記事ですね。

    >日本の製油所能力は2005年以降ほぼ半減しており、平時の消費量を精製するのがやっとという見方もある。
    ホルムズ海峡を通ってくるのは原油であることから、精製能力に関することは直接関係がない(成分組成の異なる原油を処理する事による歩留まりの影響はあるが)

    >輸送距離・コスト2〜3倍、契約切替に半年
    輸送費用と原油購入価格を曖昧にして「2~3倍」と膨らませて書いている。

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