国家安全維持法の施行に対抗する形で、英国政府は2021年1月31日、「BNO(英国海外市民)」旅券を持つ香港人とその家族を対象にした特別ビザ制度を始めた。制度開始からわずか2年で14万人超が香港から英国へ移り住み、2025年6月時点までの累計ビザ発給は18万件を超えた。
街を占拠しても、投票で圧勝しても変わらなかった政治体制に対して、最終的に多くの人が選んだのは「戦う」でも「従う」でもなく「出る」だった。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度開始 | 2021年1月31日(英国政府、国家安全維持法への対抗措置) |
| 対象 | BNO旅券保有者とその家族 |
| 在留資格 | 最長5年間の就労可能ビザ、その後永住権へのルート |
| 開始2年間の移住者数 | 約14万4500人 |
| 累計ビザ発給(2025年6月時点) | 18万1609件 |
出典: House of Commons Library「Hong Kong British National (Overseas) visa」/Hong Kong Free Press「Over 144,000 Hongkongers move to UK in 2 years」
労働力14万人分が、2年間で消えた
移住者の急増は英国側の統計だけでなく、香港側の労働市場にも刻まれた。2020年から2022年にかけて、香港の労働力人口は約14万人減少した。単なる観光や留学ではなく、働き盛りの世代がまとまって出て行ったことを示す数字だ。同時期、資本流出額は2025年までに累計760億ドル(約11兆円)規模に達すると試算されている。
出国ペースの推移
2021年Q2:BNOビザ申請が四半期ベースでピークの2万5000件超
2021〜2022年:香港の労働力人口が約14万人減少
2023年2月:制度開始2年で移住者144,500人
2025年:申請ペースが前年比47%減、定住の先行き不透明感が影響
2021年Q2:BNOビザ申請が四半期ベースでピークの2万5000件超
2021〜2022年:香港の労働力人口が約14万人減少
2023年2月:制度開始2年で移住者144,500人
2025年:申請ペースが前年比47%減、定住の先行き不透明感が影響
「出た」だけでは終わらない——定住までの壁
ビザを得ることと、英国での生活基盤を確立することは別の話だ。BNOビザは原則として英国に5年間継続居住した後に永住権(Indefinite Leave to Remain)を申請できる制度で、2025年末時点では制度開始から5年未満だった。永住権を得た香港人はまだ1万人に届かない水準にとどまっている。
| 段階 | 人数の目安 |
|---|---|
| ビザ取得(累計・2025年6月時点) | 約18万1609件 |
| 在留延長(英国内での更新) | 約4万6256件 |
| 永住権取得 | 1万人未満 |
まとめ
雨傘運動も、200万人デモも、区議会選挙の圧勝も、香港の統治構造を動かせなかった。最終的に一番大きく街の姿を変えたのは、抗議でも選挙でもなく、静かに国外へ出て行った十数万人の移住という選択だった。
📖 香港現代史シリーズ
全体像は【香港】「50年不変」の約束はなぜ23年で終わったのかで概観できます。
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出典: House of Commons Library「Hong Kong British National (Overseas) visa」/Hong Kong Free Press「Over 144,000 Hongkongers move to UK」/Migration Policy Institute「Hong Kong’s Population Shuffle」/South China Morning Post「Nearly 10,000 Hongkongers granted permanent UK residence」。本記事のドル建て金額は、断りのない限り2025年6月30日の為替レート(1ドル=144.34円・欧州中央銀行公表値)で換算した。記事内イラストは生成画像(イメージ)。




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