ほんの数年前、ネットでも経済メディアでも「日本はEVで周回遅れ」「トヨタは時代遅れ」「ガラケーの二の舞」と散々に言われていた。
ところが2026年、世界の風景はまるで逆になっている。EUはエンジン車の全面禁止を撤回し、欧米メーカーはEVで数兆円を溶かし、中国はEVを作りすぎて価格戦争に突入。そして笑われていたトヨタは、世界販売1位で過去最高益を叩き出した。
「周回遅れ」とは、いったい何だったのか。ネットでの見られ方と、その後に起きた実際を、データで並べて答え合わせをしてみる。
- EUが2035年エンジン車「全面禁止」を緩和(2025年12月)
- 欧米メーカーのEV関連損失は業界で650億ドル超(ステランティス・フォード・GM…)
- 中国EVは過剰生産(余剰最大2000万台)と値下げ競争で失速
- トヨタは2025年に世界販売1位(1050万台)・最高益。ハイブリッドが全販売の約4割
「日本はEVで周回遅れ」——ネットと世界はこう笑っていた

2020年代前半、世界の論調は「EV一直線」だった。テスラの株価は跳ね上がり、中国EVが台頭し、欧州は「2035年にエンジン車を禁止する」と宣言。
その流れの中で、ハイブリッドを主力に据え続けるトヨタは「変化に乗り遅れた象徴」のように扱われた。ネットでも「トヨタはオワコン」「EVシフトに乗れず沈む」という声が定番だった。
EUが折れた——2035年エンジン車禁止、事実上の撤回
まず動いたのが、EVシフトの旗振り役だったEUだ。
2023年3月に「2035年に新車のエンジン車を事実上禁止」を採択していたが、2025年12月、欧州委員会はこれを緩和。「CO2を100%削減」から「90%削減」に引き下げ、プラグインハイブリッドやe-fuel(合成燃料)を使うエンジン車に道を残した。
欧米メーカーがEVで溶かした「数兆円」

「EVが売れる」という前提で巨額投資をした欧米メーカーは、需要の伸び悩みで計画の下方修正に追い込まれた。その規模は会社単位で兆円クラスにのぼる。
| メーカー | EVでの後退・損失 |
|---|---|
| ステランティス | 約270億ドルの減損 |
| フォード | 2025年末に約195億ドルを計上、欧州EV専売(2030年)目標を撤回 |
| GM | 北米EV生産100万台目標を撤回、EV専売(2035年)も見直し、約76億ドルの打撃 |
| ボルボ | 2030年EV専売目標を撤回→「EV+PHVで9割」に後退 |
| メルセデス | 「2025年に5割EV」目標を断念、EV専用基盤を縮小 |
中国EV「爆売れ」の裏で起きていた過剰生産と価格戦争

「中国EVが世界を席巻」というニュースの裏では、深刻な作りすぎが進んでいた。
政府の後押しと補助金で各社が増産した結果、生産の余剰は2023年の500万〜1000万台規模から、2025年末には最大2000万台規模に膨らんだとされる。最大手BYDですら2025年後半に国内販売が3カ月連続で減り、一部モデルは30%超の値下げに踏み切った。
で、トヨタはどうなった?——世界販売1位・最高益

「乗り遅れた」と言われていた当のトヨタは、気づけば独走していた。
| 指標 | 実績 |
|---|---|
| 2025年 世界販売 | 約1050万台で世界1位(トヨタ+レクサス、前年比+3.7%) |
| ハイブリッド比率 | 全販売の約4割 |
| 米国販売 | トランプ関税下でも+7.3%(約293万台) |
| 利益 | FY2024に営業利益約4.9兆円の過去最高(HV需要が牽引) |
VW(約900万台)やヒョンデ(約727万台)を上回り、しかも利益でも稼ぐ。プリウスやRAV4などのハイブリッドが、特に米国で飛ぶように売れた結果だ。
「全方位戦略」という慧眼——なぜ正解だったのか
トヨタが守り続けた「全方位(マルチパスウェイ)」は、ひとつの動力に賭けず、ハイブリッド・PHV・EV・水素・e-fuelを並走させる考え方だ。
「決断できない」と笑われたこの戦略は、結果的に「BEV一本足」のリスクをまるごと回避する保険として機能した。充電インフラの整備の遅れ、補助金頼みの需要、中国の過剰生産——EVを取り巻く不確実性が一気に表面化したとき、複数の選択肢を持っていた強みが効いた。
今後の展望——日本、結構すごくね?
EUは方針を緩め、欧米メーカーはEV計画を現実的に修正し、中国は過剰生産の調整に苦しむ。世界はいま、「一本足は危ない」という、トヨタが10年がかりで体現してきた現実解に寄ってきている。
もちろん油断はできない。中国の電池技術やソフトウェアは依然として強力で、価格競争力も侮れない。EVそのものが消えるわけでもない。
それでも——「周回遅れ」と笑われた日本のメーカーが、世界が浮かれて転んだ数年を経て、しれっと先頭に立っている。雰囲気や空気ではなく、需要と数字で勝った。たまには、そういう日本の底力を素直に認めてもいいのかもしれない。




コメント
BYD トヨタを子会社にする ww