「防衛費43兆円」という数字だけが独り歩きしている。だが、43兆円は毎年の予算ではなく、2023年度から2027年度までの5年間における防衛力整備の水準だ。2026年度の1年分は9兆353億円で、43兆円をそのまま買い物袋にした話ではない。
この記事では、財務省と防衛省の公表資料をもとに、計画4年目にあたる2026年度予算を装備・弾薬・施設・研究などへ分解する。防衛の是非を決める記事ではなく、「何にいくら計上されているのか」を確認する記事である。
まず結論:43兆円は「5年計画」の数字だった
| 数字 | 意味 |
|---|---|
| 43兆円程度 | 2023〜2027年度の防衛力整備の水準(歳出ベース) |
| 43兆5,000億円程度 | 同計画で新たに必要となる事業の契約額(物件費) |
| 9兆353億円 | 2026年度の防衛関係予算の総額 |
| 8兆8,093億円 | 2026年度の防衛力整備計画対象経費 |
防衛省の防衛力整備計画は、5年間の整備水準を43兆円程度、新規事業の契約額を43兆5,000億円程度としている。契約額は複数年度にまたがる支払いを含むため、年度ごとの歳出予算と同じものではない。
2026年度:9兆円のうち、計画対象は8.8兆円
財務省によると、2026年度の防衛関係予算は前年度比3.8%増の9兆353億円。そのうち、SACO関係経費と米軍再編関係経費を除く防衛力整備計画対象経費は8兆8,093億円で、前年度比3.9%増となった。
| 区分 | 2025年度 | 2026年度 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 計画対象経費 | 8兆4,748億円 | 8兆8,093億円 | +3.9% |
| SACO・米軍再編 | 2,257億円 | 2,260億円 | — |
| 防衛関係予算合計 | 8兆7,005億円 | 9兆353億円 | +3.8% |
さらに2026年度の新規契約額は8兆8,459億円、計画対象経費に限ると8兆2,607億円。歳出と契約を分けて公表しているのは、装備を買う約束と、その年に実際に支払う額がずれるためだ。
ミサイル・無人機・艦艇:目立つ装備はどれか

2026年度の主要事業を見ると、弾薬だけで9,075億円。スタンド・オフ防衛能力では極超音速誘導弾と地上装置などに1,927億円、無人アセットでは多層的沿岸防衛体制「SHIELD」に1,001億円を計上している。
| 主な項目 | 2026年度計上額 | 内容 |
|---|---|---|
| 各種弾薬 | 9,075億円 | 継続的な部隊運用に必要な弾薬 |
| 極超音速誘導弾など | 1,927億円 | スタンド・オフ防衛能力 |
| SHIELD | 1,001億円 | UAV・USV・UUVを使う沿岸防衛体制 |
| 次期戦闘機GCAP | 1,602億円 | 日英伊共同開発の機体・エンジン設計など |
「ミサイルだけで43兆円」という話ではない。弾薬、情報収集、無人機、指揮通信、研究開発を組み合わせて防衛力を整備する計画で、装備品の金額も単年度の買い切り価格とは限らない。
戦闘機だけではない:艦艇・施設・人にも配分される
・F-35A 8機:1,493億円/F-35B 3機:725億円
・新型FFM 1隻:1,043億円/たいげい型潜水艦 1隻:1,208億円
・次期防衛通信衛星関連:882億円
・自衛隊施設の既存施設更新:4,368億円
・防衛生産基盤の企業体制整備:304億円
人員を支える予算も含まれる。財務省の説明では、若年定年退職者への給付や、厳しい環境で訓練・共同訓練に従事する隊員への手当を拡充する方針だ。装備を増やしても、運用する人員や補修、施設がなければ機能しないためである。
一方、個別の金額を単純に合計して9兆円になるわけではない。大型事業の内訳や関連経費が別の項目に含まれる場合があるため、ここでは財務省が示した「計上例」として読むのが安全だ。
現在地:4年目に見えてきた「買う」以外の課題
2026年度は防衛力整備計画の4年目。財務省は今後の課題として、隊員数が減少する環境でも運用できるか、防衛産業の生産能力に見合っているか、装備品の陳腐化や部品の枯渇に備えているかを挙げている。
もう一つは財源だ。防衛力整備計画は2027年度以降の財源について、歳出改革、決算剰余金、税外収入、税制措置などを組み合わせる方針を示している。2026年度の予算額だけを見て、5年後の負担まで確定したと考えることはできない。
💀まとめ:43兆円の正体は「5年分の整備計画」
防衛費43兆円は、2023〜2027年度の5年間における防衛力整備の水準。2026年度の防衛関係予算は9兆353億円で、計画対象経費は8兆8,093億円だった。内訳には弾薬、ミサイル、無人機、戦闘機、艦艇、施設、研究、人員対策が入っている。
「43兆円」を見るときは、5年計画か、単年度の歳出か、新規契約額かをまず分ける。次に、何を買うのかだけでなく、維持・運用する人と施設まで確認する。大きな数字ほど、箱を分けないと中身が見えない。
出典
- 財務省「令和8年度 防衛関係予算について」/2026年度の総額、主要装備・弾薬・施設・研究の計上額、今後の課題
- 財務省「令和8年度 防衛関係予算のポイント(概要)」/9兆353億円、8兆8,093億円、新規契約額
- 防衛省「防衛力整備計画 ⅩⅢ 所要経費等」/2023〜2027年度の43兆円程度、契約額43兆5,000億円程度
- 防衛省「令和5年版 防衛白書:自衛隊の能力などに関する主要事業」/防衛力整備計画の7つの主要事業




コメント
F-35戦闘機プログラムの総取得費は約5360億ドル(約85兆4000億円)に膨らんでおり、開発・調達を含めた計画全体のコストが拡大し続けている。日本の純国産戦闘機など夢のまた夢、諦めて共同開発にする訳だ!(笑)