yui


1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 22:03:55.45 ID:OIvzO94V0

琴吹家系列の音楽店


梓 「ムギ先輩、ホントにいいんですか?
ここにある品が全部9割引きなんて?」


紬「お年玉セールっていうんでしょ う?
世間では年始によくあることって聞いたわよ。」


律「9割引でも手が出せねえ…」


澪 「それはお前の無駄遣いの結果だ!」


唯「…」


律たちが騒ぐそば。
唯は店内をぐる、と見回 す。


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:14:14.96 ID:19YCZB1CO
このスレはSSに監視されています


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 22:12:07.23 ID:OIvzO94V0
梓「なんか…すごく悪いような…」


紬「いいのよ、いいの。さあ、お買い物を楽しみましょう♪」


2010年が明けて数日後、
桜高軽音部員たちは琴吹グループ系列の音楽店にいる。


澪「ムギ、ほんとにいいのか?」


紬「ぜんぜん?!
世間がまだまだ不景気なんだから、
こんなことをしても問題ないわよ♪」


琴吹グループは今年度も黒字経営らしい。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 22:18:58.56 ID:OIvzO94V0
律「っていってもよー、10万円のヤツも九割引きで一万ちょいだろ? 
どうせだったらもっと安くしてくれよぉ…」


紬「そう?だったら…」


澪「ムギ、コイツの与太話は無視してくれ…」


梓「わ、わたしも今は特に足りないものはないんで…
メンテナンスの用具を見せてもらいます。」


唯(うーむ…)


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 22:26:01.82 ID:OIvzO94V0
かくいう唯はギー太さえいれば満足という口だ。
とくに欲しいものはない。


紬「ぜんぜん気にしないで♪
澪ちゃんも…二台目のベースとかどう??」


澪「え…え!?」


唯(私はギー太一筋だけどね?)


と、思いつつ、唯は店の方々へ視線を向ける。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 22:29:07.49 ID:OIvzO94V0
唯「あ…!」


"モノ"との出会いというのは不思議なもの。


紬「唯ちゃん、どうしたの?」


唯「あれ…」


梓「"ピック特集"??ですか?」


唯の指すほうには、たくさんの光沢美しい、ピック達。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 22:37:04.60 ID:OIvzO94V0
唯「あれ…いいなあ…」


そのうちの一つが唯の目に留まる。
はっきり言えば、若者向けとは言えぬ、鼈甲(べっこう)細工の。


梓「でもそれだけ値段書いてないですよ?
かなり高いんじゃ…」


その中の一品。


律「ふむふむ…『ドイツの著名ギタリスト、ラウバウ氏所有の…』」


律が紹介文を読み上げる。


店員「あ…あの…」


横から店員の一声。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 22:45:38.69 ID:OIvzO94V0
店員「紬お嬢様、
その品はちょっとお売りできないんです…」


常日頃、桜高軽音部員達の我侭につき合わされている店員Aも
さすがの困り顔。


紬「いわゆる"展示品"かしら??」


店員「その通りです…」


澪「"A・ラウバル"。
著名って言う割には聞いたことないなぁ…。」


店員「お嬢様のお父様、琴吹会長の御縁ある方の品らしいんです。」


紬「お父さんの??」


店員「はい…」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 22:50:31.15 ID:OIvzO94V0
紬「ヨーロッパの洋楽関係で??聞いたことがないわね…」


紬が思案顔になる。


唯「…」


その間も、唯はひたすらそのピックに視線を向ける。
…というかぶつける。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 22:53:12.58 ID:OIvzO94V0
澪「唯、そんなまじまじと見つめてもさ…」


唯「…」


澪「非売品なんだから…」


唯「…」


澪「唯…」


唯「…」


梓(梃子でも動かない感じですね…)


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 22:57:16.48 ID:OIvzO94V0
唯「…」


唯はまわりの声が聞こえていないようだ。


紬「唯ちゃん??」


唯「…」


梓「先輩!非売品ていうのは売ってもらえない品物なんですからね!?
そんな物欲しそうにしたって…」


物欲しそう??
いや、唯の方が魅入られたような。


紬「…」


携帯電話を取り出し、どこぞへ電話をかける紬。


律「あ、もしかして…」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:03:58.83 ID:OIvzO94V0
紬「もしもし…お父さん??今、大丈夫ですか…??」


律(こりゃムギの"スイッチ"が入っちゃったか…)


紬「実はね…」


紬「そう、そうなの…」


紬「私のお友達がね…」


気に入った品から離れぬ唯。
その横には彼女のために父親へ電話をかける、筋金入りのレズっ娘。


紬「うん…」


紬「…」


紬「え??いいの!?」


澪「?」


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:05:36.18 ID:OIvzO94V0
紬「店員さん、父が…」


そういうと、自分の携帯電話を店員Aに差し出す紬。


店員「え!?まじっすか!?」


そして…


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:10:55.12 ID:OIvzO94V0
律「よかったなぁー唯よぉ!」


唯「うん!!」


唯はこぼれんばかりの輝く視線を、小さなピックへと向ける。
額より上に両手で掲げ、大事そうに護持している。


梓「でも"レンタル"なんですよね??」


口を挟む梓。


梓「それも"無期限の"。」


澪「確かにおかしな話ではあるな…」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:16:44.52 ID:OIvzO94V0
紬「私にもよくわからないわ。
お父さんに詳しく事情を話したらね…」


律「ムギのお父さんに無理言えばさ、
超有名どころのアーティストの品も貸してもらえるかも!?」


澪「確かにありえるな…」


澪が律に同調する。


唯「…」


梓「…?」


その一方、梓はピックに魅入られたままの唯を見、
なにかを、覚える。
何かを。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:22:02.75 ID:OIvzO94V0
唯「あなたは…誰?」


「…」


そして、その日の夜。
これは唯の夢の中。


目前には"よくわからないもの"が一体。
縦に170センチほどの大きさ。


「…」


黒く煤け、大きな丸太のよう。
そして、唯の鼻に酷く臭う。
嗅いだことのない臭い。
強い吐き気がこみ上げるほどの…


24 :雪華吉影 ◆/2nb17wf6k :2010/03/04(木) 23:28:12.43 ID:zAf6DL2X0
NSDAPあげ


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:30:07.08 ID:OIvzO94V0
唯「…」


しかし、唯の鼻へ通ずる臭いは
嫌悪感ではなく、強い悲哀を彼女に生む。


「きみは…しんめいか…」


"よくわからないもの"からの声。


「しんめいに愛さるる…おとめか…」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:33:46.67 ID:OIvzO94V0
"よくわからないもの"を見ることが苦しい。
しかし、見ずにはいられぬ。


唯「しん…めい??」


「神明…」


「"あいんへると"…もしくは…"あるつぇんごっと"…」


「わたしは…」


「ついに…


「"ヴァルハル"に…来たるか…」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:42:21.61 ID:OIvzO94V0
唯「よく、わかんない。」


唯の片手にはあのピック。


「ちがうのか??みえぬ…」


「わたしには、みえぬのだ…」


黒い、焦げた丸太、"よくわからないもの"が"目"を開く。
刹那のこと。
その"瞳"は海のような青。ひどく澄んだ、透明な青。
"よくわからないもの"は、唯を見ることができず、
その視線は唯の体躯を漂う。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:49:47.51 ID:OIvzO94V0
「焦熱、そして、凍えより…」


「放たれたとおもえば…」


唯は思い出す。
床に就く前、さんざんにギー太を可愛がった。
ムギから借りたあのピックで。


「とはゆえ…」


「なつかしい香りがする。君から…」


「それは、"レオ"に与たゆたはずだが…」


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:53:02.43 ID:OIvzO94V0
唯「れお??」


「"はらから"の子だ…我が甥…」


唯「はらから??」


「わたしの姉…」


「いや…」


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:53:02.43 ID:OIvzO94V0
唯「れお??」


「"はらから"の子だ…我が甥…」


唯「はらから??」


「わたしの姉…」


「いや…」


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 23:57:32.17 ID:OIvzO94V0
「君からも…きみの身体からも、懐かしい匂いがする…」


「若きころ…青いころ…」


そう言うと、液体のようなもの、を流す、"よくわからないもの"。
涙、だろうか?


唯「あなたは人間なの?」


「そうだ。」


「…」


「いや…」


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 00:03:46.88 ID:CCRwLSWN0
「そうだった。」


「人間だったのだ…」


「そうだ!」


"よくわからないもの"は続ける。


「そうだった!」


「きみのこと、クビツェクとよくはなしたなぁ…」


唯「クビツェク…って??」


「少ない、友のひとりだ…」


「公園のベンチに座り…その少し先にいた、美しい君のことを…」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 00:07:12.01 ID:FG1BtvTIO
けいおんから学ぼうシリーズか。


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 00:11:23.16 ID:CCRwLSWN0
「雑然としていたが、あのころの"ヴィーン"も、」


「また美しく…」


「さらに君もまた美しかった…」


「きみのことは絵にできなかったが…」


「むしろきみを題として、歌劇を描きたかった…」


唯「よく、わかんないよ…」


唯「ヴィーンって何?クビツェクってだれ?」


唯「あなたは、」


唯「誰?」


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 00:12:24.32 ID:Qs6RIjqYO
何かよくわからん
ヒトラー伍長な感じなの?



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 00:17:15.65 ID:CCRwLSWN0
「わたしの名??」


「…」


「そうだ。わたしはついぞ、」


「きみにわたしの名を名乗ることもしなかった…」


「そうだ、」


「そうだった…」


そういうと、"よくわからないもの"は、視線をはるか上に移す。


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 00:22:49.90 ID:CCRwLSWN0
「そうだ…」


「そうだ!!」


「我らが国はどうなったのだ!?」


再び"よくわからないもの"は唯に視線を…
獲物狩るような目を向ける。


唯「っ!!」


先ほどまでの、恋焦がれる相手を思うような目と、なんと違った…
飢えた鷲のごと…


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 00:27:41.54 ID:CCRwLSWN0
唯「わがくに!?」


唯「意味わかんないよ!?」


「ちがう!!」


「"我ら"が国だっ!!」


唯「うっ…ぅ…」


唯ははじめて恐怖を感じる。
そして、漏れ出る嗚咽。


「!?」


「す、まない…」


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 00:34:31.70 ID:CCRwLSWN0
唯「くにって…」


唯「ここは、日本…だよ…」


「ヤパン…?」


「…」


「ことばの混濁がある…」


「…」


「どういうことだ…」


唯「ヒック…」


「これは…」


「きみの、ゆめ??」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 00:50:06.39 ID:CCRwLSWN0
唯「ヒック…」


「…」


「もしや…」


「…」


「いや…そうか…」


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 01:16:33.68 ID:CCRwLSWN0
「そう…だったの…か…」


「…」


「Ihr antwortete drauf die kluge Penelopeia,
Aus der susen Betaubung im stillen Tore der Traume
(夢の間際、心地よくまどろむペネロペーは答ゆる…)」


"よくわからないもの"が何か唱えると、唯の意識に突然、白色が現れ?
そして、唯は目を覚ました。


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 01:21:46.25 ID:CCRwLSWN0
眠りから覚めれば、自分の部屋だ。
そうだ、眠り、から醒めたのだ。


さきほどまでのあれ、は夢?
けれど…


唯のすぐ横、ベッドの脇に気配を感じ唯は顔を向ける。


唯の瞳と交差する、澄んだ青い瞳。
唯のそばには、一人の男性が佇んでいた。


49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 01:22:34.86 ID:+1n2drcV0
変態だあああああああ!!!!!


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 01:30:56.73 ID:CCRwLSWN0
青い目をもつ、彫の深い男だった。
20代前半の、痩せた男。白人だとわかる。
頭髪は左半分に偏った、短めのツーブロック、
背の丈は唯より小頭一つほど高く、ひょろり、としている。
その男の青い目が、唯を見下ろしている。


唯「え…」


「…」


「きみは、夢から醒めたのだ。」


「そして…」


「わたしも。」


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 01:37:58.34 ID:CCRwLSWN0
上着は背広のような、しかしよれよれで、摩れている。
ズボンは、踝ほどまでで、いわゆる、『つんつるてん』
お世辞にも、いや正直に言ってもあまり綺麗な格好ではない。


唯「お兄さん…」


唯「なんで光ってるの??」


唯の次の一声はそれであった。
唯の側に立つ男は、薄く暗く、ほんのりと、青白く蛍光しているのだ。


「人の輝きは、魂に由来するから、」


「かもしれないね。」


男は答える。
優しく、答える。


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 01:40:37.91 ID:CCRwLSWN0
唯「あはは、まだわたし寝てるんだね…」


「いや、君は間違いなく、覚醒しているよ。」


唯「…」


唯「夢じゃないの??」


「ああ。」


唯「…」


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 01:47:12.34 ID:CCRwLSWN0
唯「…」


唯「も、ももも、もしか…して、お、おばけっ!?」


「おばけ??」


「確かにね。魂が肉体から離れれば…」


「その存在はすなわち人外だろうね。」


そういうと、その青年は微笑む。
はにかんだ微笑だが…
強く、惹きつけられる。


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 01:54:17.83 ID:CCRwLSWN0
唯「だ、誰なの…」


唯「おばけの…お兄さん…」


唯は震えながら発する。


「すまない、初対面の女性に対して名乗らずにいるとは…」


「わたしは、アドルフ。」


アドルフ「アドルフ・ヒットラー、と言います、お嬢さん。」


"ッ"の部分を小気味よく発音し、青年は唯にこたえる。


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 01:57:23.02 ID:BSLIxd1s0
ネオナチの唯ちゃんなんてやだやだ!
支援


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 01:58:54.26 ID:CCRwLSWN0
唯「あどるふひとらー??外国人??」


アドルフ「そう、ドイツ人、だよ。」


青年はそう答える。


唯「…」


唯「が、がいじんのおば…け…」


唯は再び震えを覚える。


アドルフ「怖がらせてしまって、いるね…」


青年の表情から笑みが消え、そのはにかみは一層痛々しさを帯びる。


唯「あ…」


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:05:58.51 ID:CCRwLSWN0
唯はすぐに悟る。
この青年の表情は、澪が度々その面に映す…


唯「あ、ご、ごめんない…おばけのお兄さんにおばけなんて言って…」


アドルフ「こちらこそ…すまない。どうやら今の私は…」


アドルフ「君の認識どおり、人外の存在らしいから…」


唯「…」


唯は青年に憐憫を覚える。
この青年は、表面上は、はきはきしているとはいえ、
澪並の人見知りだと理解する。


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:11:52.08 ID:CCRwLSWN0
唯「あやまらなくちゃいけないのは私のほうだよ。」


憐憫を覚えると、唯の心から恐怖が消えていく。


唯「え、と、あどるふさん?」


アドルフ「呼び捨てで構わない。
アドルフでも、ヒットラー、でも。」


青年は答える。
表情に笑みが戻りつつある。


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:17:43.49 ID:CCRwLSWN0
唯「アドルフ…」


唯「なんか照れるね…」


唯も可愛らしくはにかみつつ、微笑む。


唯「気にせずに。」


青年も微笑む。


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:21:02.78 ID:CCRwLSWN0
唯「アドルフはどうして私の部屋にいるの?」


当然の質問だ。
側にいるのが生身の人間なら、間違いなく変質者扱いだろう。


アドルフ「私にもよくわからない。」


アドルフ「ただ…」


アドルフ「どうやら、君がもっていた"小撥"と関係があるらしい。」


唯「こばち(小撥)??」


アドルフ「君が昨晩ギターを奏でるのに使った、鼈甲製の。」


唯「あ、ムギちゃんのお父さんに借りたピック…」


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:21:02.78 ID:CCRwLSWN0
唯「アドルフはどうして私の部屋にいるの?」


当然の質問だ。
側にいるのが生身の人間なら、間違いなく変質者扱いだろう。


アドルフ「私にもよくわからない。」


アドルフ「ただ…」


アドルフ「どうやら、君がもっていた"小撥"と関係があるらしい。」


唯「こばち(小撥)??」


アドルフ「君が昨晩ギターを奏でるのに使った、鼈甲製の。」


唯「あ、ムギちゃんのお父さんに借りたピック…」


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:28:40.24 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「その小撥は、私が、甥のレオに与えた小細工物の"一部"だ。」


唯「へ、そうなんだ。じゃあ、このピックは元々アドルフの物なんだね。」


唯からはすっかり、怖れ、が消え、
持ち前の人懐こさ、と好奇心が頭をもたげつつある。


アドルフ「もともとは、義母の髪飾りだったはずだが…」


唯「義母…」


アドルフ「ああ。父の前妻のことだ。私の母は後添えでね。
甥の母、姉のアンゲラとは腹違いになる。」


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:34:45.05 ID:CCRwLSWN0
唯「ふ、ふくざつな家庭じじょうだね…」


アドルフ「気にしなくてかまわないよ。」


アドルフはそう言う。


アドルフ「ああ!」


アドルフ「忘れていた!まったく私としたことが…」


アドルフの表情に再び、はにかみ、が浮かぶ


唯「?」


アドルフ「君の名前を聞くことを…」


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:39:47.82 ID:CCRwLSWN0
唯「わたし?」


唯「私は、ゆい。ひらさわ ゆい だよ。」


アドルフ「日本人はシナ人と同じく姓、名前、の順だから…」


アドルフ「平沢お嬢さん、ですね?まったく私としたことがすいませんでした…」


唯「?」


唯「わたしも、呼び捨てで、"ゆい"でいいよ?」


アドルフ「え!?いいの、かい?」


唯「うん♪」


66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:46:07.90 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「身内と妻以外を、名前で呼ぶのにはなれないものでね。」


唯「妻!?結婚してるの!?」


アドルフ「ああ。私が…」


アドルフの表情が強く歪む。


アドルフ「私の生を終える直前に、結婚式を挙げたんだ。」


そう答えるアドルフ。


唯「…」


唯は、彼の表情を読んで、それ以上聞こうとはしなかった。


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:50:35.31 ID:CCRwLSWN0
唯「ご、ごめんなさい…」


アドルフ「気にしないでいい。」


アドルフは、そう答える。
無理やりに、はにかみ微笑んで。


唯「と、とにかく…」


唯は話題を戻す。


唯「なら、このピックはアドルフに返した方がいいかな…」


70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 02:59:49.62 ID:CCRwLSWN0
アドルフの表情は、再びにこやかなものに戻っている。
けれど、それは、笑みを装った、唯を安心させるためのものだが。
これから先、アドルフが表情を崩すことはほとんど無くなる。


アドルフ「気にしなくていい。
君が今までどおり使ってくれたまえ。」


唯「いいの?」


アドルフ「ああ。」


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 03:03:28.50 ID:CCRwLSWN0
唯「ありがとう♪」


唯は微笑む。


アドルフ「ところで、私も死人なのでね…」


アドルフ「ここが日本だということはわかったが…」


アドルフ「ベルリンが落ちてから、どのくらい時間が経っているんだろうか?」


唯「べるりん、て何?」


アドルフ「…」


アドルフの質問も悪いが、彼は現代日本の、
平均的女子高生の教養について全く知らない。


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 03:09:19.68 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「ドイツ国の首都なんだが…」


唯「あ、そ、そうなんだ!?
私、東京とアメリカのニューヨークしか知らないから…(汗)」


アドルフ「…」


アドルフ「…なら確か、日本は皇帝陛下臨御のもと、その皇紀2600年を祝…」


アドルフはそう言いかけてやめる。


アドルフ「現在は西暦何年だろうか?」


一番的確な質問だ。


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 03:17:13.06 ID:CCRwLSWN0
唯「えっと…」


唯「えとね…」


側においてあった携帯を手に取り、なにやら始める唯。


アドルフ「…」


ちなみに、アドルフは天然女性が苦手ではない。
自身の妻がそうであったように、その手の女性に対してはかなり寛容なほうだ。


78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 03:22:19.69 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「その、機械、はなんだい?」


唯「え?携帯電話だよ?」


アドルフ「けいたいでんわ??」


アドルフは、数秒思案する。
が、技術発展、という概念とともに思考をやめる。


唯「あ、今は2010年だって!!」


アドルフ「!!」


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 03:30:42.44 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「…」


アドルフ「65年…!!」


彼はそう口にする。


唯(ってことは、アドルフは60年前に死んでるんだ…)


アドルフ「ああ…」


アドルフ「ああっ!!」


アドルフは強く、強く悲痛な表情を帯び、ベッドの横にしゃがみ込む。


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 03:37:25.64 ID:CCRwLSWN0
数十秒後。


アドルフ「…」


アドルフ「ゆい。」


アドルフは唯に青い瞳を向け、問う。


アドルフ「今のドイツは…どうなっている…


アドルフ「…のだろうか?」


悲痛な表情のアドルフ。


唯「え、えと…」


82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 03:47:07.28 ID:CCRwLSWN0
唯は答えることができない。
アドルフに気兼ねして、というよりも、
その知識材料が"ビール"と"ソーセージ"と、両親が現在滞在してる場所
ということぐらいしかない。


唯「あ!」


両親が少し前に送って来た土産を思い出す。


唯「たしか東西ドイツ統一記念20周年がうんたらかんたら…」


唯にしては珍しい。


アドルフ「東西ドイツ統一記念20周年!?」


アドルフ「どういうことだ…」


84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 03:55:06.83 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「…」


アドルフ「ゆい、君は見たところ学生のようだが。」


唯「うん!高校3年生になったばっか!」


アドルフ「歴史、は学校でならっているだろうか?」


唯「うん!世界史取ってるよ!」


アドルフ「…」


早速アドルフは、自分のことよりも唯のほうを心配する。


85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:01:07.03 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「教材があれば見せてもらいたいのだが…」


唯「教科書なら多分バックに入ってると思うんだけど…
ちょっと待って…」


アドルフ「…」


唯「あ、あった!」


アドルフ「!!」


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:05:21.51 ID:ZxEApbFrO
唯がどんな風に対応を変えるか、或いは変えないかが楽しみ。


87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:08:28.34 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「すまないが早速読ませてもらっていいだろうか!?」


唯「もちろん!」


アドルフ「早速…」


アドルフ「…」


アドルフ「く…」


アドルフ「どうやら私は…物体に触れることができないようだ…。
ページを開いて、もらえないだろうか?」


唯「おーけー!!」


88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:15:09.45 ID:CCRwLSWN0
それから、アドルフは第二次大戦後から現在までの、
中道的な教科書の内容にそった、歴史の歩みを知り…


アドルフ「…」


唯「あ、あどるふ?」


アドルフ「やはりアメリカが…
マルクスなどかわいいものじゃないか…」


アドルフ「…」


唯は、アドルフが生前、何者だったのかに気が付いていない。
先ほど彼と一緒に眺めた、教科書の記述や写真には
山ほどの情報がアドルフについて記されていたのに。


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:25:26.40 ID:+1n2drcV0
なんだおもしろいじゃないか


90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:26:22.28 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「いや、覚悟はしていたことだ…」


アドルフ「けれどしかし、私のことをさも悪魔のように…」


アドルフ「いや、堕天使…」


アドルフは独りごつ。


アドルフ「何より…イサァクの種どもは再び蔓延り…あろうことか国家まで…」

アドルフ「忌まわしい…げに忌まわしい!!」


アドルフ「汚らわしい種族汚染者どもめ!!」


唯「ビクッ…」


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:33:13.29 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「やはり、私の歴史観は全く正しかった!!」


アドルフ「しかし…」


アドルフ「今、私の意識が目覚めていること…
神は私を罰されているということか…」


アドルフ「ドイツを救えなかった、この私を…」


アドルフ「…」


アドルフ「いや…」


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:33:13.29 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「やはり、私の歴史観は全く正しかった!!」


アドルフ「しかし…」


アドルフ「今、私の意識が目覚めていること…
神は私を罰されているということか…」


アドルフ「ドイツを救えなかった、この私を…」


アドルフ「…」


アドルフ「いや…」


92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:38:51.62 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「いや違う!」


アドルフは、唯のベッドに腰掛ける。


アドルフ「今、この私の意識が再び蘇ったということは…」


そう言うと、アドルフは右手で、ポン、と一度右ひざを打った。
霊体?のはずの彼から、小気味良い音がする。


93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:46:15.72 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「…」


アドルフ「神よ。」


アドルフ「感謝します。」


そう言い終えると、アドルフは潤んだような目で、虚空を見つめる。
押し黙ったまま。


唯は少し混乱していた。芽生えた恐怖を再び、ほんの少しだが、覚えつつ。
これが先ほどまでの、内向的だが、しかし、人の良さそうに見えた青年のそれだろうか?
そして何より唯は、このような顔をする人間を、面とむかっても、テレビでも、目にしたことは無い。
あどけない少年の眼差しを持ちながら、老獪さを隠そうともしない、表情の男を。


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 04:48:25.57 ID:CCRwLSWN0
ごめんなさい、すこし寝ます
すいません


100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 07:52:24.17 ID:zV2a8s/H0
ジーク・憂たん♪


101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 08:54:11.61 ID:2qHxAxQ70
唯がヒトラーなら憂はヒムラーか


104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 10:09:53.72 ID:CCRwLSWN0
すみません、再開します。


105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 10:10:24.03 ID:3aikX3joO
おかえり


107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 10:15:35.84 ID:CCRwLSWN0
明けて翌朝。


唯「うーんんんん…」


唯「むにゃむにゃ…」


眠っている唯。
そして、ガチャ、と唯の部屋のドアが開く。


憂「あねーちゃんーーん!朝だよぉ!」


憂が姉を起こしに来る。


唯「あと、ごふん…」


憂「おねーちゃんっ!!」


108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 10:22:12.11 ID:CCRwLSWN0
憂「遅刻しちゃうよ!早くゴハン食べよ!」


唯「わかったよぉー」


ムクリ、と起き上がる唯。


起き上がった唯の、その視線の先には、
青白く輝く人型。


唯「!!」


109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 10:28:36.56 ID:CCRwLSWN0
唯「ヒッおば…」


と言いかけて昨夜のやり取りを思い出す。


アドルフ『おはよう、ゆい。』


アドルフは唯の机の前の椅子に腰掛けていた。
やさしく唯に微笑みかけ、言葉をかける。


アドルフ『もちろんこれは、夢ではないよ。』


※以降のアドルフの台詞には二重括弧を使います。


110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 10:36:01.08 ID:CCRwLSWN0
唯「あっ、やっぱりそうなんだ…」


憂「どうしたの??」


憂が首をかしげる。


唯「あっ!」


唯「この人はアドルフって言うんだけどね…」


憂「?」


111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 10:41:41.76 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『ゆい、やめておきなさい。』


アドルフ『どうやら妹さんには、私の姿は見えていないようだよ。』


アドルフが諭す。


唯「そうなんだ…」


憂「??」


憂は格別気にしない。
唯が寝ぼけて変なことを口にするのはいつものこと。


112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 10:46:36.49 ID:CCRwLSWN0
朝食をとる唯と憂。
アドルフは唯の隣の椅子に腰掛け、平沢邸の内部を見回している。


唯「もぐもぐ…」


アドルフ『…』


唯「…」


唯(すごく変な感じ…)


113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 10:55:26.57 ID:CCRwLSWN0
現在のシチュエーション、
平沢姉妹とその横に座る白人男性の幽霊。
確かにシュールである。


憂「ちゃんと牛乳も飲むんだよ!」


唯「うん!」


アドルフは微笑みながら、二人のやりとりを見守る。


115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:00:23.67 ID:1PqBqRmq0
ちょっと先が気になるから支援。
唯ちゃんは誰が来てもなんとなく上手く折り合いつけそうな感じだな。



116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:01:07.02 ID:CCRwLSWN0
そして登校。
仲良く並んで歩く平沢姉妹。
一歩下がってその後を、アドルフがついて行く。


唯は時折、ちらちら、と、アドルフに視線を送る。


唯「…」


憂「どうしたの?おねーちゃん??」


唯「ううん!な、なんでもないよっ!」


117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:03:38.61 ID:vh8PGxoc0
なにこれ面白い
期待あげ



118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:08:13.83 ID:CCRwLSWN0
アドルフが声をかける。


アドルフ『ゆい、黙って聞いてくれたまえ。』


唯「…」


アドルフ『どうやら私は、その鼈甲の小撥と離れてはいられないようなのだ。』


唯「!」


唯(地縛霊ってやつだね…)


ちなみに、ある場所や建築物に縛られているのが地縛霊である。
その理論でいけばアドルフは地縛霊でない。


120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:13:12.65 ID:o/TTXThE0
ヒカルの碁みたいな?


121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:15:36.33 ID:CCRwLSWN0
律「うーっす、ゆいー、ういちゃん」


澪「おはよう。」


唯「おはよう!りっちゃん、みおちゃん!」


憂「お早うございます!」


律や澪と行き会う。


121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:15:36.33 ID:CCRwLSWN0
律「うーっす、ゆいー、ういちゃん」


澪「おはよう。」


唯「おはよう!りっちゃん、みおちゃん!」


憂「お早うございます!」


律や澪と行き会う。


122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:20:36.02 ID:CCRwLSWN0
校門近く。
桜高の生徒が多く歩いている。


アドルフの表情は、無表情のそれに近くなっていた。
彼は、あまりアジア人種のことを好いていない。
というか、はっきりいえば嫌悪の対象である。


唯に対してだけは、まったく違うようだが。


123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:28:34.67 ID:CCRwLSWN0
そして、場所は音楽室。
授業がはじまる。


さわ子「はーい、さっき配った譜面に注目。」


アドルフは唯の座席の隣に立ち、
音楽の教科書と、先ほど配られた譜面に目を向ける。


アドルフ『おお!これは…』


唯(そういえばアドルフって、ドイツ人だよね?
でも、日本語は読めるみたい…)


生前の彼は、ラテン語すら満足に読めず、
ドイツ語以外の言語はまったく解さなかったはず。
ところが今は、日本語を読み取ることができるらしい。


124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:39:04.18 ID:9wIbhS660
>>1には期待してるぜ
必ず完結させてね



125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:39:38.83 ID:CCRwLSWN0
さわ子「とりあえず私が伴奏つきで歌います。
一回目だから、感覚をつかむ程度に聞いてね。」


軽快なピアノの調べがはじまる。
そして歌い始めるさわ子。


さわ子「はるかに はてなく ♪」


アドルフ『!』


126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:44:06.53 ID:CCRwLSWN0
さわ子「ドナウの水は ♪」


アドルフ『!!!』


ヨーハン・シュトラウスの『美しく青きドナウ』である。


ハードメタルビッチの彼女も、もちろん音楽教師。
一応、というか、かなりマジで上手い。
対して、うっとりするような表情のアドルフ。
さわ子の歌にすっかり聞き入っている。


アドルフ『…』


唯(…)


こうして、唯の一日が進んでいく。


127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 11:55:55.02 ID:CCRwLSWN0
けれど音楽の授業以外ではむしろ、
アドルフは終始むっつりとした表情を浮かべていた。
アジア人への嫌悪に加え、桜高は女子高である。
生来の恥ずかしがり屋であるアドルフにとっては酷な環境だ。


そして、現代日本人の挙動を観察し、アドルフは強く思う。


アドルフ(…)


アドルフ(野生への回帰…野蛮なる文明…)


128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:01:44.89 ID:CCRwLSWN0
アドルフ(日本人はアーリヤ人に劣らず、
高い規律と徳性、品格をもっていたはず…)


アドルフ(…)


アドルフ(なんという退廃!!)


アドルフ(これは、もしや…)


アドルフ(わが祖国も…)


129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:04:18.10 ID:3aikX3joO
ドナウの?水はー♪
常に流れる?♪


脳内再生が止まらない……



130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:05:39.30 ID:cbFHGqOfO
戦時中の人間からしたら現代っ子なんてとても見れたもんじゃねぇだろうなぁ


132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:12:12.06 ID:CCRwLSWN0
そして、放課後の音楽室。


唯「みんなおはよー!」


音楽室に入る、唯とアドルフ。


澪「唯っ!大遅刻だぞ!」


梓「ほんとにもう!!」


唯「ごめんね?」


アドルフ(姦しい…)


律「やっと来…」


律「…」


133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:18:30.06 ID:CCRwLSWN0
律「!?」


律が目を剥く。


律「お、おまえが持ってるその大量の本は…」


唯「えへへ…図書室行ってたんだ。」


アドルフの頼みで、唯は図書室から借りられるだけの本を借りてきたのだ。
現代史や現代政治、現代の経済事情etcについての。


律「ど、どうしちゃったんだよ…」


梓「せん…ぱい…」


律と梓がひどく心配そうな表情で唯を見る。


135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:23:46.83 ID:OtsHglCf0
以前からドイツ軍好きで最近「やる夫がフューラーになるようです」読んだ俺感涙もののスレ
紬とかSSの黒服似合いそうだなぁ



136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:24:16.91 ID:CCRwLSWN0
律「おまえが自分から…活字を読もうとするなんて…
やっぱり…」


紬「ゆいちゃん!なんで相談してくれなかったの!!
私たちお友達でしょう!?」


澪「いや、唯もこう見えてナイーブなところがあるから…」


唯「え…え!?」


アドルフ『?』


唯が精神的にどうにかなってしまったのでは!?
ということで、暗黙のうちに全員が一致している。


137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:33:43.28 ID:CCRwLSWN0
唯「えっと…」


律「なあ唯!こころあけっ広げにして、お前の思うところを語ってくれよ!
我慢するなよっ!!」


梓「もっと抱きついて来ていいですからっ!
スキンシップをはかりましょうよっ!」


唯「あ、あのね…」


唯「この本、私が読むわけじゃないというか…」


律「!!」


梓「…もしかして憂のかわりに、とか?」


138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:38:41.63 ID:CCRwLSWN0
唯「そ、そうだよ!憂に頼まれてね!」


結局、梓に調子を合わせる唯。


律「…」


律「なあーんだ…。たく…」


律が白けた様な顔をする。


澪「唯、心配させるなよ…」


アドルフ(もしや、ゆいは、あたまが酷くよ…)


アドルフはそう思い至ろうとするが、結局やめた。
えてして多くの女性とはそういうもの、と自分に言い聞かせて。


139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:46:07.61 ID:CCRwLSWN0
律「あー白けた白けた。」


梓「もう、ほんとに…」


紬「唯ちゃんにもお茶入れるね♪」


唯「うん、お願い!」


そう紬に答えると、唯は自分の"指定椅子"に座る。


140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:48:13.46 ID:cbFHGqOfO
まさかヒトラーをかわいいと思う日が来るとは


141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:51:20.89 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『この子たちは、音楽室に遊びに来ているのか…?』


アドルフの、あきれたような声。


唯「あは、あははは…」


アドルフの素直な感想に、唯は反論できない。


アドルフは音楽室に来る途中、唯から、
彼女の素性や、この桜高について簡単に説明を受けていた。


アドルフ『けいおんがくぶ??』


アドルフ『いったい、どのような音楽を…』


143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 12:58:21.88 ID:CCRwLSWN0
紬「はい、どうぞ♪」


紬はコースターに乗ったティーカップを唯の前に置く。


唯「ムギちゃん、ありがと♪」


紬「あ、そうだわ!唯ちゃん!」


唯「?」


紬「きのう唯ちゃんに貸してあげたあのピック!
あの元の持ち主について、お父さんから色々聞いてきたの!」


唯「!!」


アドルフ『!』


144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:04:57.27 ID:CCRwLSWN0
律「へー、そりゃまた。」


律がさも興味なさそうに、そう言う。


紬「あの持ち主のラウバルさんて方は、故人だったんだけどね、
そこそこ有名なドイツのギタリストで…」


澪「持ち主は亡くなられてたのか…」


アドルフ『…』


145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:14:22.19 ID:CCRwLSWN0
紬「それでね、彼の家族、というか親戚がかなりの有名人だったの!」


唯「え、どういう…こと??」


紬「彼はね、ラウバルさんはね…」


紬は一息ついて、さらに語りはじめる。


紬「あのアドルフ・ヒトラーのね…」


紬「ヒトラーの…お姉さんの子孫に当たるらしいの!」


唯「!」


アドルフ『!!』


146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:17:17.25 ID:CCRwLSWN0
律「まぢかよ!?すげーなそりゃぁ…」


紬「お父さんがドイツの音楽会社の方からね、数枚あるうちの一つを…」


唯「アドルフって…有名人なの??」


きょとん、とした顔で、唯が質問する。


梓「え゛…」


147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:22:13.51 ID:CCRwLSWN0
澪「ま、さか、アドルフ・ヒトラーを知らないとか…ないよな?」


唯「?」


律「うちの馬鹿聡ですら知ってるぞ…ってか…」


律「…」


律「はいる!!ひっとらーー!!」


148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:31:05.63 ID:SlbbDF1TP
りっちゃん地雷踏んじゃったー


149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:32:15.70 ID:CCRwLSWN0
律は突然そう叫ぶと、右手を前方斜め前に差しかざす。


アドルフ『…』


アドルフは気にも留めない。
彼は、自分とNSDAPを揶揄して、いわゆるナチス式敬礼を真似る"戯れ"が
旧連合国で流行っていたことを知っている。
かの国々で、自分が嘲笑の対象であったことも、勿論知っている。


律「…ってぐらいは聞いたことあるだろ??」


唯「あ、そういえば…」


唯の中で昔、聞いたことがあるような、
そんな、おぼろげな記憶が浮かび上がってくる。


150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:38:14.16 ID:uX3Yfysa0
えっ、実際にそんな空気あったの?


152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:40:23.15 ID:CCRwLSWN0
>>150
ごめん、解説は一番最後に…


155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:55:12.71 ID:uX3Yfysa0
>>152
ありがとう、静かに見てます



151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:39:07.36 ID:CCRwLSWN0
澪「第二次世界大戦を引き起こしたドイツの独裁者で、
ユダヤ人を何百万人も虐殺した人間だぞ。」


アドルフ『…』


唯「え…」


唯の頭の中に、混乱が生まれはじめる。


153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:45:04.07 ID:CCRwLSWN0
梓「アンネの日記読んで、私何度も泣いちゃいましたよ…」


梓は哀しい目になり、そう言う。


唯「え…どういう…」


唯「どういうこと??」


そう言うと唯は隣に立つアドルフへ視線を向ける。
彼の顔を仰ぎ見るように。


154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 13:53:28.92 ID:CCRwLSWN0
アドルフの視線と、唯の視線が交差する。
澄んだ青い瞳。澱みがまったく含まれぬ、混じり気の無い。


唯の魂が揺れる。静かに、波立つように。


アドルフ『ゆい。私はかつて?』


アドルフは語り始める。


アドルフ『ドイツ国の大統領兼首相だった。』


アドルフ『いや、それ以前に…』


アドルフ『一人の政治家だった。』


157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:00:45.34 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『そして、死よりも忌むべき不名誉と絶望の中から、
ドイツを再び蘇らせた。』


アドルフ『私の生涯は闘いだった。』


アドルフ『すべては、神の御旨のもと、われ等が祖国のため?
私は闘った。』


唯「戦争を起こして…」


唯は問う。


159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:09:47.12 ID:CCRwLSWN0
唯「たくさんの人を殺したの?」


目の前の男から視線をそらさずに。
まっすぐに、見つめて。


律「そうだぞ、ってなんであさっての方向に言ってんだよ…」


唯の問いは、友人たちに向けたものではない。


アドルフ『確かに私は戦争を始めた。しかし、私は戦争が好きなわけではない
戦争は必要悪であることは確かだが、人間はやはり平和のうちに普段を生きるべきだ。
しかし…』


アドルフ『しかしだ!』


160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:15:40.42 ID:iWgBKdVK0
ハイル・支援!


162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:17:57.89 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『我々を彼らは、悪魔だ、戦争狂だと言う!』


アドルフ『そんな者たちこそ、私から言わせれば憂鬱症で草臥(くたび)れただけの、
相手にすることすら躊躇われる馬鹿者たちだ!』


アドルフ『そのような者達は、生の本質から目を背け…日々を生きているに過ぎない。』


アドルフ『彼らは歴史と世界の歩みを、まったく理解しようともしないし、
また、できない。』


この男は何のために、唯に、いったい何を語っているのだろうか?
抽象的な論旨だが…
これは、弁明なのだろうか?それとも、自分の矜持を誇っているだけなのだろうか?


166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:27:47.90 ID:poNmDAit0
興味深いな。
終わったらでいいので参考文献所望です。



167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:30:21.89 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『ゆい。確かに好き好んで戦争をはじめる人間もいる。』


アドルフ『けれど、そのような者たちの末路などは、そら寒く悲惨なだけだ。』


アドルフ『私は、祖国の人々のために闘いを選んだ。
そうせざろう得なかったのだ。しかし、それから逃れようとすれば…
同じく、悲惨な結末が待っているだけだろう。』


唯「…」


この男の言葉は、何かを帯びている。
声音に宿っているのか、その精神のうちから湧き上がってくるのか。
その澄んだ青い瞳に潜んでいるのか?


その身振り手振りは大仰にもなり、祈りを捧げるような、
小さくまとまった"かたち"にもなる。


169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:40:14.94 ID:CCRwLSWN0
男の言っていることを、正直、唯は理解できていない。
けれど、一つだけ、解り出した、というか、ふと思い浮かんだことがある。


唯(アドルフにも、きっと…)


唯(きっと、じじょー(事情)があるんだ…)


唯「わかった。うん。」


唯「わかったよ。」


171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:48:58.36 ID:CCRwLSWN0
梓「本当ですか??あやしいなぁ…」


アドルフ『そうか…』


澪「まあ、唯のことだから…」


アドルフ『ゆいが理解してくれたのなら、私もうれしいよ。』


優しく微笑むアドルフ。


唯「うん!」


唯(そうだ、そうだよ。)


唯(こんなに純粋で優しいアドルフが…)


175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:54:31.56 ID:CCRwLSWN0
そのときである。突然に、部室の扉が開く。


さわ子「おはろー!」


さわ子が来たようだ。


アドルフ『!』


さわ子「ムギちゃん、お茶ー。砂糖はいつもの倍ね。」


そう言うと、律の隣に腰掛けるさわ子。


176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:54:38.37 ID:3aikX3joO



俺、ヒトラーの事何にも知らないんだな、と改めて感じる



178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 14:58:46.17 ID:XKMUWXOwO
諸君、私はこのスレ、スレタイで損してると思う
支援



180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:08:09.82 ID:iWgBKdVK0
>>178
いや逆にこのスレタイのおかげで普段読まないけいおんスレ見てる。
支援。



179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:02:44.80 ID:CCRwLSWN0
背もたれに大きく体重を預け、大股を開いて両足を無造作に放り出す。


さわ子「あー職員会議まじダルかった…」


首元からブラウスの中にに手を入れ、ぽりぽり、と脇を掻くさわ子。


アドルフ『…』


アドルフは目を疑っていた。


181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:12:58.37 ID:CCRwLSWN0
これが今朝、『美しくあおきドナウ』を優雅に歌い上げた、
あの女性だろうか?
奥ゆかしい"清純"な女性だった、はず。


さわ子「でさぁ、その間中ずっとね、」


さわ子「体育の○○先生が、チラチラいやらしい視線むけてくんの。」


澪「うわぁ…」


律「マジで!?付き合っちゃえよ!」


さわ子「冗談!あんな筋肉ダルマこっちから願い下げ、
というか正直キモいだけ。ほんとまじウザいわ。」


アドルフ『これは、酷い…』


唯「あははは…」


182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:19:53.19 ID:CCRwLSWN0
さわ子「ん?そのピック…」


唯「あ…」


テーブルの上においてあったピックを拾い上げるさわ子。


さわ子「鼈甲製じゃないの?」


さわ子「高校生の分際でこんな物百億年早いわよ。」


183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:28:13.83 ID:CCRwLSWN0
澪「アドルフ・ヒトラーの親戚のギタリストの形見、
みたいなものらしいんですけど…」


さわ子「ホントに!?」


突然、さわ子の目がきらきら輝きはじめる。


律「さわちゃんどったの?」


さわ子「大学生のころね、ナチスの服装真似てライブやってた時があったのよ!」


澪「親衛隊の黒い制服、とかでですか…?」


さわ子「そうそう!あたしはヴァッフェンSSの将校服だったわぁ…」


184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:36:18.95 ID:CCRwLSWN0
ヴァッフェンSSとは簡単に言えば、
ナチス党は親衛隊の、純軍事部門である。


梓「うわぁ…」


露骨に嫌悪感を示す梓。


アドルフ『…』


アドルフも梓に同じく。


さわ子「総統の『わが闘争』を入場券代わりにしたりとか…
色々やったわねぇ…」


さわ子は昔の"杵柄"に思いを馳せているようだ。


185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:37:36.54 ID:+aVZJl9QO
伍長殿に微笑まれたらユアマインフューラーとか言いながら失禁する自信がある


187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:44:22.12 ID:CCRwLSWN0
さわ子「で、どっちの子孫?ウィリアムパトリック??アンゲラ・ラウバル??」


紬「ラウバルさんて方の物らしいんですけど…あ、紅茶どうぞ♪」


紬が紅茶を運んでくる。


さわ子「サンキュー♪」


さわ子「へー、じゃあ総統のお姉さんの孫かひ孫か…」


律「ヒトラーって兄弟がたくさんいたの??はじめて知った。」


さわ子「総統自身は上から三番目だっけ。
小さいころに死んじゃった兄弟もいたらしいけど…」


さわ子「上の二人、兄のアロイスと姉のアンゲラと総統は、
腹違い、お母さんが違うの。」


188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:55:30.71 ID:CCRwLSWN0
さわ子「ウィリアムパトリックは、アロイスの息子よ。」


さわ子「で、あとはお母さんが同じな妹、パウラ・ヒトラー。
成人できたのは総統をあわせてこの4人よ。」


さわ子「アンゲラには息子一人と娘が一人いて、
息子のレオには子孫がいるわ。」


さわ子「アロイスの息子がウィリアム・パトリックとハンツ。
名前見てわかるように、
ウィリアム・パトリックの方のお母さんがイギリス人で、
アメリカに移住したんだけど…」


189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:57:59.24 ID:aGGx9DD80
さわこ詳しすぎだろwww


190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:58:51.48 ID:6iyvpl1gP
>>189
海外版の歴女ってやつかね



191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 15:59:26.12 ID:VOsl3Eax0
さわちゃん歴史教師だったっけ?


192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 16:01:27.21 ID:cbFHGqOfO
メタルにどっぷりはまってたらしいからな
多少詳しくても不思議ではない



193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 16:01:39.12 ID:CCRwLSWN0
さわ子「ウィリアム・パトリックにも三人、男の子供がいて
現在もその三人は生きてると思ったけど…」


律「よく知ってるな…」


さわ子「結構調べたもの!」


アドルフ『ああ…!』


アドルフは憐憫の表情を浮かべている。


アドルフ『なんと、なんと可哀相な娘だ…このような娘が、美しい歌をうたい、
そして、教育者であるなど…』


195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 16:13:41.61 ID:6iyvpl1gP
さわちゃん同情されとるwwwwwwww


197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 16:16:03.70 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『日本人に深い同情を覚えるよ…』


唯「あは、あはは…」


唯はもう笑うしかない。


さわ子「…」


さわ子「ねぇ、ゆ、い、ちゃん??」


猫なで声を上げるさわ子。


唯「な、なにっ!?」ゾクッ


198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 16:21:37.61 ID:CCRwLSWN0
さわ子「そのピック、私に、ちょーだい?」


唯におねだりする、さわ子。


アドルフ『ブルッ…』


アドルフは怯えを見せる。


さわ子「ねぇ…」


唯の隣に来ると、艶かしく彼女を抱擁する。


199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 16:23:17.99 ID:CCRwLSWN0
すいません、少し休憩します


201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 16:27:50.89 ID:iWgBKdVK0
>>199
待ってるよ!



200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 16:24:06.09 ID:b0pz3cpw0
さわ子も魅了されたのか


206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 18:01:26.52 ID:VOsl3Eax0
国家社会主義なのに保守とはまた面白い


ほしゅ



207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 18:15:22.00 ID:CCRwLSWN0
すいません、再開します。


209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 18:16:09.27 ID:CCRwLSWN0
紬「あらあらあらあら…/////」


紬が"わきわき"し始める。


澪「先生、そのピック、唯のじゃないですよ?」


さわ子「あら?じゃあもしかしてムギちゃんの?」


澪「半分正解、というか、琴吹家系列の店から
レンタルしてもらったものなんです。」


さわ子「あらぁ…」


210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 18:22:00.47 ID:CCRwLSWN0
さわ子は紬に擦り寄る。


さわ子「む、ぎ、ちゃぁぁん…」


紬「あ、せん、せぇ、あ…だめぇ…」


紬「みんなが、みて…あ…/////」


さわ子のしていることはあまりにも卑猥なため、
言葉にすることすら躊躇われる。


アドルフ『なんたる淫売…!!』


211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 18:31:41.49 ID:CCRwLSWN0
唯「さわちゃん、ごめんね…」


唯「そのピックでね、私がギー太と遊んであげたいんだ。」


さわ子「えー…」


唯「こればっかは、譲れないもん!」


唯のまなざし。


アドルフ『!!』


アドルフ(この…意思を湛えた眼差し。真っ直ぐな意思の…)


アドルフ(ヴァルハルの乙女たちも、斯くあるのだろうか?)


212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 18:32:46.57 ID:iWgBKdVK0
大支援を!一心不乱の大支援を!


214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 18:40:11.00 ID:CCRwLSWN0
澪「ちょっと待て。」


唯「え?」


さわ子「なに?」


澪「偉そうにそう言うお前は、」


澪「今ものんきにお茶してるだろう…」


唯「あ…」


215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 18:47:10.54 ID:CCRwLSWN0
澪「練習。」


梓「そうですよっ!」


唯「う、うん…」


アドルフ『…』


そして、各々の楽器を取り練習を始める。


218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:02:28.42 ID:CCRwLSWN0
唯「1秒あれば それで十分 ♪」


澪「♪?」


律「セイセイ!!」


アドルフ『これは…』


唯「ずるいくらい男前 ボ?っと眺めていたら ♪」


梓「♪?♪?」


アドルフ『なんと…』


221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:08:01.28 ID:CCRwLSWN0
唯「Let's try! 無口すぎるキミ ♪」


紬「♪」


アドルフ『…』


唯「誰にも止められない ♪」


アドルフ『酷い…』


アドルフ『なんと、愚かしい…』


222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:16:34.52 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『野蛮人の、原始音楽のようだ…』


そして、演奏が終わる。


唯「よし!」


梓「なかなか良かったです♪」


律「あー疲れた疲れた…」


アドルフ『…』


唯(あ、アドルフ…)


唯(ぼーってしてるね…聞きほれちゃったってやつ!?)


見当違いどころではない。


223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:18:13.26 ID:iWgBKdVK0
反応wktk


225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:24:28.89 ID:CCRwLSWN0
唯達の演奏する音楽より推論して、アドルフはいくつかの帰結を得ていた。


アドルフ(おそらく、この少女たちの趣向が、この時代の日本において極めて特殊、
ということはあるまい。)


アドルフ(わが国をはじめとする文明国も、おそらくは同様に…)


アドルフ(大衆音楽は、俗っぽく、単純愚鈍で、とても聞いていられたものではない。
しかし、煤けた香りの中にすら、『歌』があったはずだ…)


アドルフ(だのに、これは…それどころの話ではなく…)


アドルフ(アンゲラの子孫もこのような?)


アドルフ(可哀相なアンゲラ!!)


アドルフ(…)


アドルフ(ああ…恐れていたことが…)


226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:25:02.35 ID:b0pz3cpw0
先の展開が読めないw


228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:32:39.75 ID:CCRwLSWN0
アドルフ(大衆の台頭が一層…)


アドルフ(マルクシズムめが死に体だと喜んでみれば…)


アドルフ(シュイペングラー氏が生きていたならば、なんと書くだろうか…?)


アドルフ(おそらくその"弊害"は多岐に渡り、とてつもないほど人々の魂を汚していることだろう。)


アドルフ(…)


アドルフ(しかし、この娘は…)


唯を見やるアドルフ。


229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:38:20.65 ID:CCRwLSWN0
×シュイペングラー氏
○シュペングラー氏


231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:40:55.12 ID:CCRwLSWN0
アドルフは生前、多くの女性著名人たちと知的好誼を結んだ。
そしてアドルフは、唯に対し、それらの女性と同等の評価を覚え、
姪っ子にでも抱くかのような愛着を感じつつある。
唯は年若く、そして、アジア人であるのに。


唯から、決然とした、輝ける、直感へと通ずる才能を覚えるのだ。
夢遊病者の確信、と自ら評するごとく、アドルフは直感を高く扱う。


アドルフはまさに、ショーペンハウアーの行き過ぎた"弟子"であった。


そして、今、アドルフは、己が霊体として存在していることにより、
神の存在とその命令をはっきりと確信している。
彼自身の中で。


232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:43:15.94 ID:LO71n7xD0
唯ちゃん現代のヒトラーフラグktkr


233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:48:36.59 ID:CCRwLSWN0
そして、人間の復活、キリスト教的な、である、
それも十分にありえる、と考える。
つまり自分が肉体を得て再び…


いやむしろ、再び…肉体を得る必要などあるのだろうか?
肉体が終始、精神に付きまとうなど、不便なだけでは?


アドルフ『そうだ…』


唯「??」


アドルフは、まず、唯を"教育"することに決める。
彼は生前、多くの人々を"教育"し、正道へ導いてやった、との強い矜持を持っている。


アドルフ『そうしよう。』


かつて死を選んだ男は、三度(みたび)、蘇るのか?


234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:50:52.23 ID:VTviF28T0
日本人の評価内心でもっと低くないか?w
猿真似しか出来ない的なイメージだったかと思ってたお



235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:59:56.56 ID:CCRwLSWN0
そして時間は進み、その日の夕食時の平沢家。


唯「おひしいよ、ういぃ?♪」


憂「ありがと!おかわりもあるからね♪」


唯「うん♪」


今日の献立は、ハンバーグシチュー、シーフードサラダ、野菜のお浸し、
里芋の煮っ転がし、茄子の浅漬け、味噌汁、ご飯。


アドルフ『うん。確かに美味しそうだ…』


アドルフは素直に感心する。


242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 20:10:09.86 ID:CCRwLSWN0
唯「うん♪憂は自慢の妹だよ!」


憂「お、おねーちゃんってば////」


憂に向けられた言葉ではない。


アドルフと同時代の人間は、平沢姉妹よりも、もっと年若いころから
様々な労働に従事している人間が多々いた。
しかし、それを勘案してすら、憂の家事スキルには目を見張るものがある。


243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 20:16:44.64 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『そして…』


アドルフ『家族の仲が良い、ということは大変に重要なことだよ。』


唯は、部室で、練習の後に、さわ子から聞いた話を思い出す。


さわ子『総統は兄のアロイスと、その息子ウィリアム・パトリックとは
相当仲が悪かったらしいわ。』


さわ子『まあ、マスコミに要らぬネタを提供されたり、
生活費を要求されたりしたら、そりゃねえ…』


245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 20:32:36.52 ID:CCRwLSWN0
さわ子『晩年には、一説ではだけど、姉のアンゲラとも仲違いしたそうよ。』


アドルフは、自身の家族のことについて、
その後も唯に話してはいない。


唯「わたしは、すっごく幸せなんだな…」


憂「も、もうおねーちゃん////」


憂は照れ隠しにテレビのリモコンを手に取る。


テレビ『早いうちに政府の考え方をまとめていくことは大事だ。
その中で当然、沖縄、米国の皆さんに…』


鳩山来留夫にそっくりな男が報道陣に囲まれている。


248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 20:41:23.02 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『この冴えない男性は誰だい??』


アドルフはテレビの中の鳩山来留夫似の男を指差す。


唯「あ、はとぽっぽしゅしょう??」


憂「駄目だよおねーちゃん、鳩山総理大臣のことそんな風に言っちゃ。」


アドルフ『そうか、この男が今の日本の首相なのか…』


250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 20:47:51.37 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『本当に冴えないね…』


唯「でも、東大でてるんだっけ??」


アドルフ『東大??東京帝国大学のことかな?』


唯「わかんない、でも日本で一番頭の良い大学。」


アドルフ『おそらくは、東京帝国大学のことか。』


憂「??」


憂には当然、唯がアドルフに発した言葉は、独り言だと捕らえられる。


251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 20:54:09.87 ID:CCRwLSWN0
憂「弟さんも東大出てて大臣だったし、お祖父さんの鳩山一郎さんも総理大臣だからね。
すっごいエリートさんなんだよ?」


アドルフ『ふむ…鳩山一郎…聞いたことが無いような有るような…』


唯「ほおぉぉ…そいつはすごいねえ…」


実際、唯にはかなりどうでも良い話だ。


アドルフ『アメリカとの同盟絡みの話題か…』


252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 20:59:17.46 ID:qtWKbwsN0
唯「あ、はとぽっぽしゅしょう??」 ←かわいい


253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 21:04:49.30 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『敗者に対しては十分気前の良い処遇だ。』


アドルフ『カルタゴのように、破壊され塩撒かれなかっただけマシ、
というものだ。』


アドルフ『しかし、ベルリン、いやドイツ中が、灰塵寸前までに至った…』


アドルフ『日本も我がドイツも、経済的には、
再起以上のことをやってのけたそうだが…』


天井の照明に視線を移し、沈痛な表情を浮かべるアドルフ。


254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 21:16:03.99 ID:CCRwLSWN0
唯「…」


唯「あ、うい、ごちそうさま。」


憂「おねーちゃん、もういいの?」


唯「うん!」


そう憂に答えると、唯は自分の部屋へ戻る。


唯(アドルフのこと、元気付けてあげないと!)


257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 21:23:59.57 ID:CCRwLSWN0
唯の部屋。


唯「さ、アドルフ!」


唯「借りてきた本を読もう♪」


アドルフ『すまない、ゆい。』


申し訳なさそうな表情を浮かべるアドルフ。


唯「いいからいいから?♪」


259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 21:34:10.37 ID:CCRwLSWN0
唯「どれから読む?」


アドルフ『ふむ…』


アドルフ『これにしよう。』


アドルフが指差したのは『世界経済入門』という名前の新書。


アドルフ『短時間で現在の世界経済のあらましが掴めそうだ。』


唯「おっけー♪」


唯はその新書を手に取る。


260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 21:39:33.55 ID:CCRwLSWN0
すぐに序文を読み終えるアドルフ。


唯「読むの早いね…」


アドルフ『そうかな?』


唯「じゃあ、次のページに…」


アドルフ『すまない、ゆい。中を飛ばして、"おわりに"の部分を開いてもらえないだろうか?』


唯「え?いいけど…」


262 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 21:44:44.34 ID:CCRwLSWN0
アドルフは"おわりに"の部分も読み終える。


アドルフ『では、第一章を開いてほしい。』


唯「うん。」


それから再び、アドルフは読書に没入する。


唯「…」


263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 21:45:49.40 ID:0AxO1MTB0
古きよきVIPSSのかほり


265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 21:53:04.31 ID:CCRwLSWN0
唯「…」


アドルフの読書法は、簡潔に言えば、
必要な情報と不必要な情報を特に峻別するもの。
多かれ少なかれ誰しもがやっていることだが、
これをアドルフは徹底して行う。
そして、早い。


唯(うわ、もう読み終わりそうだよ…)


30分もしないうちに、"おわりに"の部分に近づいてしまう。


266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 21:54:14.12 ID:VOsl3Eax0
好き嫌いが激しい、というより好きなものだけにとことんのめり込む彼らしい


268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:09:43.60 ID:CCRwLSWN0
そして二冊目、三冊目と進み…
唯の入浴時間をはさんで、日が変わるころには最後の五冊目に入る。


唯「ふう。最後の本だね。」


唯は疲れている様子。


アドルフ『すまない、ゆい。負担をかけてしまっているようだ…』


唯「ううん、いいのいいの!私も勉強になってるし!」


大嘘である。唯はもう、一冊目の本の名前すら忘れてしまっている。


269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:16:13.73 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『いや、正直、読み過ぎたよ。久しぶりだったからね…』


唯「あ、そっか…」


唯はアドルフが死人だったことを思い出す。


アドルフ『しかし、本当に…』


アドルフ『本当に世界は変わってしまった。』


271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:23:25.57 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『核分裂兵器のもとの均衡、ヨーロッパ連合、新興国の台頭、ソビエト連邦の崩壊。』


アドルフ『大衆文化の極致化、そして…諸技術のさらなる発展、産業革命期の比ではなく…』


アドルフ『電算機など特に…』


アドルフ『…』


アドルフ『そして一層、混迷した時代だ。』


唯「…」


272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:25:26.55 ID:uZ6VSVg00
今追い付いた
アドルフが女性に幻想を抱いて打ち砕かれる所がすげーそれっぽいwwww



273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:30:53.32 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『ドイツからは精神的支柱がすっかり取り払われてしまったようだ。』


アドルフ『美徳も誇りも…大切なものがことごとく…』


アドルフ『…』


アドルフ『これではまるで…』


アドルフ『これではまるで豚小屋ではないかっっ!!!』


唯「ビクッ…」


突然大声を張り上げたアドルフ。
唯は驚いて、ぎょっ、とした顔になる。


274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:39:54.40 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『す、すまない…ゆい…』


唯「ううん、大丈夫だよ!」


アドルフ『すまない…』


申し訳なさそうなアドルフの表情。
唯の心に、アドルフへの、庇護心のような物が芽生え始める。


アドルフ『ぐじぐじ、と悩むのはもう止めよう。
それは…男のすることではない。』


アドルフはそう、独りごつ。


アドルフ『大切なのは、進むこと。前線の只中で勇敢に闘うこと。』


275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:41:04.73 ID:yZDj7Hyu0
これはおもしろい支援
ヒトラーが青年って表現されてるのは、何歳ぐらいをイメージしてるの?



277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:46:06.77 ID:CCRwLSWN0
>>275
失礼。
第一次大戦開戦時ぐらいのころのヒトラーをイメージしてる
だから25歳くらい


281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:50:27.38 ID:CCRwLSWN0
アドルフはそう言うと、天井を、虚空をその青い瞳で見つめる。
決心に至ったときのような目。


アドルフ『さて…』


アドルフ『もう良い時間だろう、ゆい。』


アドルフ『夢見の時間だよ。』


優しく、幼児を嗜めるかのように、微笑を浮かべつつ、
唯にそう促す。


282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:54:14.37 ID:uZ6VSVg00
>>281
なんかすげえムカつくんだが



283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:56:26.71 ID:CCRwLSWN0
唯「あ、うん…」


アドルフ『?』


アドルフ『どうしたんだい??』


アドルフは、唯が何かを抑えていることに気付く。


唯「アドルフに聞きたいことがあってね…」


アドルフ『言ってみなさい。』


唯「アドルフのね、家族のこと。」


アドルフ『…』


286 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 23:04:04.67 ID:CCRwLSWN0
唯「今日、さわちゃん先生が言っていたこと。」


唯「アドルフは、今の世界のことを知りたがっているけど、」


唯「じゃあ、アドルフの家族が、アドルフが死んだ後に、
どうなったかについては知りたくないの?」


アドルフ『!』


目を見開くアドルフ。
そしてほんの少し、哀しそうな顔をしたあと、
アドルフは答える。


アドルフ『大いに気になるよ。しかし、少なくとも…』


アドルフ『私の姉と妹、甥のレオは、生きてはいないだろう。』


287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 23:06:04.79 ID:OtsHglCf0
辛抱たまらん
hoi2でアディ+けいおんメンバーで米ソ英叩き潰してくる



290 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 23:13:05.01 ID:vh8PGxoc0
家族の話なんてしたくないだろうな
父親に虐待されてトラウマがあったみたいだから・・・



291 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 23:13:05.99 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『…』


そういい終えると、口を結ぶアドルフ。


唯「さわちゃん先生が調べれたんだからさ、どっかの本にきっと載ってるよ!」


唯「学校の図書室か、学校の図書室になかったら、市の図書館に行って、調べよう?」


アドルフ『…』


唯「ね?」


アドルフ『ああ。』


アドルフ『しらべ、よう…』


唯の"思い"は、アドルフの心を強く打つ。


292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 23:19:21.46 ID:CCRwLSWN0
唯「それとね、アドルフ。」


アドルフ『なんだい?』


唯「アドルフの家族のこと、おしえてもらっても、いい、かな?」


唯「イヤじゃなかったら、だけど…」


アドルフ『…』


アドルフは目を閉じ、数十秒、何事かに思いを向ける。


アドルフ『うん、いいよ。』


アドルフ『寝物語に、話してあげよう。』


アドルフ『私の両親ときょうだいたちのことを…』


295 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 23:34:18.90 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『私の父、アロイスはね、私生児だったんだ。』


唯「しせいじって??」


アドルフ『正当な婚姻のもとに生まれた子供ではないということだよ。
一言で言えば、父親がだれかわからない、ということ。』


唯「そうなんだ…」


アドルフ『父は13歳のころに、家を出た。』


アドルフ『そして、その強い向上心のもと、オーストリア二重帝国の
正税関士にまでなった。』


アドルフ『父は満足に学校へ通ってすらいなかった。
そのような経歴の人間が正税関士となるというのは異例中の異例、大出世だ。』


296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 23:42:47.84 ID:CCRwLSWN0
唯(なんだろう…)


唯(そんなすごいお父さんの話してるのに…)


唯(アドルフ、すごくそっけない。)


アドルフ『父の性格は簡潔にまとめれば、傲慢、非強調的、偏執的なほどに頑固。
それに加えて大酒飲み。』


アドルフ『父を世に押し上げたはずの精神的徳性は、逆に、
人間としての魅力という観点からすれば、即失格、ということになる。』


アドルフ『わたしも母も兄も、父からひどく殴られたものだ。』


唯「あ…」


298 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 23:54:52.38 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『そんな父も行きつけ飲み屋で、ぽっくりと逝ってしまったよ。
胸膜からの出血が死因だったらしい。』


アドルフ『酒好きの彼からすれば、最高の幕引きかもしれないが…』


アドルフは、まるで、知らない他人のことを話すかのように、
父親について語る。


アドルフ『そして、私の母クララ。』


アドルフ『私の母は、父の姪だった。』


唯「え゛…」


アドルフ「もちろん"義理"のだよ。しかし、血縁関係はあってね、
父の従兄妹ぐらいに相当するだろうか。」


唯「それはまた…」


299 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 23:59:18.67 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『母は献身的な性格で、心やさしい女性だった。
そして、熱心なカトリックだった。ゆいにはキリスト教徒、といったほうがいいかな?』


唯「ほうほう…」


アドルフ『けれど言い換えれば、卑屈、とも言える。』


アドルフ『母は、暴君のごとき父の、まったくの言いなりだった。』


アドルフ『けれどね、女性の身は弱いものだから…』


アドルフは寂しそうな顔をしている。


300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:06:32.80 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『そんな母も、父が死んで数年後、癌で逝ってしまった。』


唯「!!」


アドルフの表情は、ひどく痛々しいものになる。


アドルフ『クリスマス間近のある日のことだ。』


アドルフ『癌の痛みに苦しむ母、そして、ついに逝ってしまった母。
かたや、きらびやかクリスマスの装飾と楽しげな歌…』


アドルフ『私はクリスマス・ソングを聞くと、
死んでしまいたくなるほどに、気が滅入ってしまう。』


唯「アドルフは…お母さんのことが、大好き…だったんだね…?」


唯は涙を浮かべている。


アドルフ『…』


アドルフは何も言わずに、瞳を閉じる。


301 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:06:53.30 ID:GZ/bkJkl0
その経験からか、アドルフは女性や子供に優しくて大いに好かれたそうだね
党員の子供相手には自ら四つんばいになってお馬さんごっこしてあげたってエピソードがあるらしい



303 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:17:09.70 ID:u82SIynwO
>>301
※ただしゲルマンに限る



305 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:22:55.53 ID:1GczQXT20
>>303
俺らだって朝鮮人の子供には親切にはせんだろう



306 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:24:19.67 ID:ckiGtHJL0
>>305
それはない



304 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:21:38.06 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『そして、わたしの兄弟たち。』


アドルフは目を再び開けると、話を続ける。


アドルフ『あの音楽教師が言っていたように、私には腹違いの姉と兄、
早くに死んでしまった同母の兄と姉、そして弟と妹がいた。』


アドルフ『兄の名はアロイス、彼も父と同じ名前だった。
兄は粗暴な性格でね。父からの暴力のうっぷんを、
常に私にぶつけていたよ。』


唯「…」


アドルフ『しかし、兄も父からの暴力と私の母、つまり兄からすれば義母との不仲のために
14歳のころに家を出た。』


307 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:31:17.12 ID:6LOCPsO70
他のけいおん部員にも他のイデオロギーの創始者がとり憑く展開とかあったら燃える


309 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:39:40.86 ID:TiaS9BXOO
>>307
ムギにソクラテスが憑いちゃって発狂ですね



308 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:32:24.26 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『そのあとは、職を転々とし、イギリスに渡り、そこでイギリス人女性と結婚した。』


アドルフ『さらに兄は、ドイツに舞い戻って、
義姉と離婚しないうちに、別の女性と結婚さえした。』


唯「ひどいね!それって…」


アドルフ『ああ。重婚というやつだ。我が兄ながら、まったくなさけない…』


アドルフ『とにかく、兄について語ることは特にあるまい。
私と兄は互いに嫌いあっていたということ。
それだけだ。』


310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:41:55.75 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『姉の名はアンゲラ。』


アドルフ『彼女は兄と違って、私の母の言うことを良く聞いた。』


アドルフ『とても家庭的な女性だったよ。私のことも、とても愛してくれた。』


アドルフ『だが、少々意固地というか気の強い所があってね…』


アドルフ『彼女の再婚問題で、たしかに一時疎遠になった。結局は仲直りしたけれど。』


唯「よかった…!」


アドルフ『けれど、私からすれば、大切な姉だよ。』


唯「うんうん、仲が良いのが一番だよ!」


アドルフ『はは!まったくその通りだね。』


312 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:54:34.59 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『弟の名はエドムント。』


アドルフ『彼は、私が10歳のころ、5歳という幼さで死んでしまった。』


唯「そう、なん…だ…」


アドルフ『はしか、だった。』


アドルフ『可愛い盛りだったのに。弟を失った悲しみで、
私はひどく打ちのめされたよ。』


唯「…」


313 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 01:04:28.07 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『そして、妹の名はパウラ。』


アドルフ『彼女はおとなしい、控えめな女性だった。』


アドルフ『私の運動のために、彼女は度々とばっちりを受けてね。
アンシュルッスの前までは、オーストリア政府から監視されていたはずだ。』


アンシュルッスとは、ナチス時代のドイツとオーストリアの合邦化(統一のようなもの)のことである。


アドルフ『そして、私が死んだときには、結婚もせずに、もちろん子供もいなかった。
まったくすまないことをしたものだ…』


314 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 01:08:38.99 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『それに、口にこそださなかったが、
私が政治家を続けることに対して良い印象を持っていなかったようだ。』


唯「どうして??」


アドルフ『私の身を心配したのだろうね。
パウラは本当に心の細やかな子だ。』

アドルフ『政治家は命を危険にさらさねばならぬこともあるし、激務でもある。
身体に良いはずがない。』


唯「優しい妹さんだね…」


アドルフ『きみの自慢の妹、憂君のようにね。』


唯「えへへ////」


315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 01:13:08.95 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『そして、きょうだいの子供たち、私の甥と姪…』


アドルフ『いや、これは今度にしよう。』


唯「えー…」


アドルフ『もう一時間以上も話し込んでしまった。
もうかなり遅い時間だ。』


アドルフ『さあ、ゆい。眠りにつきなさい。』


唯「うん、わかったよ…」


そして、その日もまた過ぎていく。


316 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 01:15:23.75 ID:Bo6NrwuS0
ごめんなさい、私も唯と同じくすこし眠ります、
すいません


321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 01:44:12.02 ID:p17rkWFR0
読んでないけど④
スレタイに惹かれたから完結したらアフィブログさん達だれかまとめといてね



327 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 03:51:37.79 ID:Za7dN4Qr0
国家社会主義保守。


344 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 11:31:43.31 ID:gjrhPOxHP
「アドルフに告ぐ!」でしか知らないな
ヨーロッパではヒトラーを再評価することは犯罪



345 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 11:41:48.42 ID:vRvb+IyM0
日本の東條英機みたいなものか。
あの人もイスラエル共和国政府が祖国の英雄を選んだ名簿の中に入ってるらしいじゃない。
ユダヤ人保護に尽力した功績で。
イメージで悪役が地に付いちゃってるよねヒトラーも東條も。



347 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 11:58:47.85 ID:Bo6NrwuS0
すいません、再開します。


350 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 12:04:10.88 ID:Bo6NrwuS0
こうして、アドルフが唯に"憑い"てから数週間が経過した。
そして、それに伴って、アドルフの"教育"も巧妙、唯にあわせたかたちをとって進んでいった。
これは、教養や知識といったもののみではなく、芸術に対する志向の、
アドルフ流の陶冶、という側面も持っていた。


唯は、あれで飲み込みが早く、応用も利く。
ようは、良き教師がいればよい。


しかし…


351 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 12:09:59.09 ID:Bo6NrwuS0
桜高は二年生の、梓と憂の教室。
時は放課後。


和「ちょっと、失礼するわね。」


生徒A「!!」


生徒A「せ、生徒会長さん!?」


和「ごきげんよう。平沢憂さんはいるかしら?」


生徒A「あ、はい、窓際奥で、梓ちゃんや純ちゃんと話してますけど…」


和「ありがとう。」


そういうと和は、憂たちのところへ近づく。


352 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 12:16:06.33 ID:Bo6NrwuS0
梓「あ、憂!和先輩がいらしたよ!」


憂「和さん、すいません…」


和「相談があるって、あんたから聞いて…」


和「やっぱり、というか確実に唯のことよね?」


憂「はい…」


和「場所変える?」


憂「できれば…あと、梓ちゃんもいっしょに…、いいかな?」


梓「うん、もちろんだよ!」


353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 12:21:37.88 ID:Bo6NrwuS0
生徒室となりの、空き教室。


和「で、唯がどうかしたの?」


憂「…」


和「憂?」


梓「…」


純「…」


梓(なんか純まで、さりげなく混ざってるし…)


354 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 12:26:11.22 ID:Bo6NrwuS0
憂「おねーちゃんが…」


憂「おねーちゃんがおかしくなっちゃったみたいなんです…」


和「唯がおかしくなった??」


和「まあ、あの子が変なのは小さいころから、何時ものことだけど…」


和「具体的には、どんな風に??」


357 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 12:32:14.16 ID:Bo6NrwuS0
憂「誰もいないはず空間とおしゃべりをするようになっちゃったんです。
それも長い時間…」


和「独り言じゃないの?」


憂「最初に気付いたときは、私もそう思いました。
夜遅くまで誰かと喋ってるようだったらから…」


憂「で、のぞき穴からそっと覗いたんです。」


梓「の、のぞきあなって…なに?」


和「あずさ、人間には知らなくていいこともあるのよ…」


梓「は、はい…」


361 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 12:39:40.09 ID:Bo6NrwuS0
憂「でも、お姉ちゃん、ケータイも子機も持っていませんでした。」


憂「気付いた日から、それが延々と、毎日続いているんです…」


憂「だから…」


憂「おねーちゃん、やっぱり頭がおかしくなっちゃ…て…」ヒック


和「それはちょっと…どころじゃなくて、かなり心配だわ。」


362 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 12:46:00.49 ID:Bo6NrwuS0
和「とるべき最善の措置は…」


和「担任のさわ子や養護教諭の先生と協力して、
うちの学校のかかり付け医の先生ともね。
小父さんと小母さんにも帰国してもらわないと…」


純「…」


純「それ、多分、憑かれてますよ?」


憂「!!」


梓「やっぱりそうなのかなぁ…私や澪先輩が練習を急かすから、
唯先輩疲れちゃって…」


純「梓、字が違うから。疲労の"疲れ"じゃなくて、霊にとり憑かれるの、"憑かれ"。」


366 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 12:54:28.69 ID:Bo6NrwuS0
梓「…」


和「…」


梓「和先輩、すいません。この娘、すぐに追い払いますんで…」


憂「そういえば、純ちゃんのお祖母ちゃんって…」


純「北津軽は川倉のイタコよ。」


和「…」


梓「…」


368 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 13:00:29.78 ID:Bo6NrwuS0
憂「その変な髪形も、たしかイタコの伝統なんだよね?」


純「これはファッションなの!可愛いでしょっ!!」


梓(それはちょっと…)


和(ないわね。)


純「憂、前に言ったわよね?」


憂「?」


純「憂の家の隣にある社。」


憂「!!」


370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 13:07:24.67 ID:Bo6NrwuS0
純「あの社。"名も無い神明"を祭っているみたいだけど…」


和「あの社が??はじめて聞いたわ。
というか、"名も無い神明"って?」


純「日本は八百万の神の国で、しかも仏教も一緒、だから、たくさんのホトケサマもいます。」


純「でも、アマテラスオオミノカミや阿弥陀如来のような大格の方々は、ほんの一部。」


純「その他ほとんどの方々は、名前すら知られていないか、
忘れさられてしまったんです。」


純「あの社にもそのような"名も無い神明"が祭られています。」


和「そうなの…」


梓(憂の家に遊びにいくのが怖くなりそう…)


371 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 13:14:34.88 ID:Bo6NrwuS0
純「ほとんど"勢力"らしい"勢力"もない神明なんですが…
ただ。」


和「ただ??」


純「たとえなんですけど、高圧電線の下にいる家庭には
癌系の病気が起きやすいっていいますよね?」


和「ええ。」


純「その高圧電線を、平沢家隣の社、と読み替えてください。」


372 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 13:22:52.50 ID:Bo6NrwuS0
和「つまり、あの社からよくわからないエネルギーのようなものがでて、
唯によくわからない影響を与えた、ってこと?」


純「はい、その通りです。あの社の神明からは、"他化自在天"や"アメノウズメ"、
と同じ匂いがします。」


純「これらの神明に共通する勢力は"魅入る"。
つまり、人外の存在を惹きつけるということです。
その勢力が唯先輩に、多分ですけど、宿ってしまった。」


純「だから、中学のころに憂に忠告して、
"勢力払い"のコツをいくつか教えたはずなんですが…」


憂「ごめんね純ちゃん、その時、話半分以下で聞いてた…」


純「…」


383 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:18:51.51 ID:F9jWUwy10
>>372
俺人間だけど唯ちゃんに惹きつけられてる



373 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 13:31:35.95 ID:Bo6NrwuS0
和「鈴木さん、ごめんなさい。正直に言えば、その話信じられないわ。」


純「仕方ないですよ、慣れてますし。」


和「まあ、とにかく…」


和「梓、これから部活行くんでしょう?私もついていくわ。」


梓「はい。憂も行こう?」


憂「うん…」


純「私もついてくよ。」


梓「はいはい…」


374 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 13:39:32.36 ID:Bo6NrwuS0
一方、軽音部部室。


律「梓がまだ来てないなんてめずらしいな。」


澪「そのうち来るよ。お前たちとは違うし。」


律「なぬー!?」


紬「はい、唯ちゃん。頼まれていたCDよ。」


唯「ありがとムギちゃん♪」


アドルフ『ふむ…』


CDに視線を送るアドルフ。


376 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 13:58:19.63 ID:Bo6NrwuS0
律「なに?そのCD。」


唯「ムギちゃんから借りるんだ♪」


澪「『ショパン選集』?クラシックか。」


律「クラシックぅ!?あ、それも憂ちゃんに頼まれたんだろ?」


唯「わたし用だよ♪」


律「…」


384 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:25:17.73 ID:Bo6NrwuS0
やべ、、
>>376>>378 ショパンじゃねーや、ブルックナーだ。
すいません


378 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:05:22.31 ID:vbaxbFf3O
どんどん知的になっていく唯ちゃんかわ唯


380 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:08:57.19 ID:Bo6NrwuS0
唯にショパンを勧めたのはもちろんアドルフだ。


唯「あ、今から聞いてみようか?」


澪「たまにはクラシックもいいかもな。」


紬「じゃ、プレーヤーにセットするわね?」


アドルフ『♪』


386 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:33:09.94 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『とりあえず、交響曲第4番を聞いてみようか?』


唯「ムギちゃん!"こーきょーきょくよんばん"選曲おねがーい!」


紬「わかったわー♪」


律「唯がクラシックの曲名を覚えているだと…」


ワグナーに入る前に、
まずはブルックナーの明るい軽快な曲で、
唯の興味を引こうとするアドルフ。


388 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:37:38.29 ID:Bo6NrwuS0
紬「ポチッと♪」


澪「ふむ…」


唯「おお…」


? 三分後 ?


唯「ぐぅ…ぐぅ…zz」


律「スピースピーzzzz」


澪「こいつら…」


アドルフ『なんと呆れた…』


右手で額を覆い、首を軽く左右に振るアドルフ。


391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:46:13.36 ID:UCKfPUaD0
センスのあるSSだと関心させられた
支援



392 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:46:21.66 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『まあいい。あせらずとも。』


アドルフ『聞けば琴吹君は大量に音源をもっているとか?』


アドルフ『ゆいに頼んで借りてもらおう。』


アドルフ『さすがは部室に音楽室を使っているだけあって良い音だ。
このコンパクトディスク、というのも。』


アドルフ『だができればホールで生を聞きたいものだ。』


アドルフはブルックナーに聞き入りつつ、ぶつぶつ何かを言っている。
両手を後ろにくんで、時計回りにゆっくりと部室の中を歩き回りながら。


393 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:48:23.09 ID:YYXM0ekh0



これか


394 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:51:52.93 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『やはり音楽が無ければ、人生は色あせたものになってしまう。』


アドルフ『ただし良い趣味を追求すれば、の話だが。』


アドルフ『ゆいのことも、あの五月蝿いだけの屑音楽から卒業させてやらねばな…』


ガラッ


部室のドアが開く。


澪「あ、和?」


和「お邪魔するわね。」


395 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:52:02.51 ID:XwBxbdhXO
Урааа!


397 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 14:53:41.15 ID:iCnFl+Sh0
総統閣下!>>395はアカであります!


398 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:02:01.19 ID:Bo6NrwuS0
梓「お早うございます…」


憂「失礼します。」


澪「梓も一緒だったのか。憂ちゃんもいらっしゃい。」


憂「お邪魔します。」


純「あの、私も入っていい?憂が通せんぼしてるんだけど…」


399 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:08:22.35 ID:Bo6NrwuS0
憂「あ、ごめんね純ちゃん。」


純「しつれ…」


アドルフ『共産中国はうまく使えそうだ。ロシアは、もう駄目だな。
主権民主主義など馬鹿なスラブ人には不相応…』


純「!!!」



純「いた。若い外人が一人。」


和「!」


憂梓「「!!」」


400 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:10:14.16 ID:UCKfPUaD0
寺生まれってスゴイ


405 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:20:19.28 ID:Nkk/5JuQ0
純ちゃん「破ぁ!」


403 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:15:07.57 ID:Bo6NrwuS0
純「こっちには気付いてないようです。」


純「私も知らん振りを装いながら観察するので、
生徒会長さんたちも自然に。」


和「わかったわ。」


憂「うん。」


梓(純、胡散臭いよ、純…)


澪「あ、たしか…鈴木さん??
いったいどうしたんだ?」


和「な、なんでもないわよっ。」


406 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:22:10.95 ID:Bo6NrwuS0
梓「あ、クラシック聞いてたんですか?」


澪「そうなんだけど、こいつらは寝ちゃったよ…」


唯「zzz…」


律「スーフー…zzz」


梓「…」


407 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:27:02.95 ID:Bo6NrwuS0
紬「今、お茶入れるわね。」


和「ありがとう、紬。」


純「…」


アドルフ『しかし、一番の問題はいかにドイツを…
ゆいと切り離された場合、もしかしたら私の意識も…』


純("烏賊にどどいつを"…"ゆい"…"イサキも"…??
ジャミングがひどくて、上手く聞き取れない…)



413 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送り します:2010/03/06(土) 15:32:10.70 ID:2yrz0mb9P
純「はっ!はぁぁぁあんっ!イ、イサキは?イサキ は、と、取れたの??」


アドルフ「ああ。でかいイサキが取れたよ。今年一番の大漁だ」


純「大漁っ!!イサキぃぃ!!総統かっこいいいいぃぃぃい ぃくううううう!」



408 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:29:21.22 ID:hM+eLgYW0
    |┃三     , -.―――--.、
    |┃三    ,イ,,i、リ,,リ,,ノノ,,;;;;;;;;ヽ
    |┃    .i;}'       "ミ;;;;:}
    |┃    |} ,,..、_、  , _,,,..、  |;;;:|
    |┃ ≡  |} ,_tュ,〈  ヒ''tュ_  i;;;;|
    |┃    |  ー' | ` -     ト'{
    |┃   .「|   イ_i _ >、     }〉}     _________
    |┃三  `{| _;;iill|||;|||llii;;,>、 .!-'   /
    |┃     |    ='"     |    <   唯ちゃんはわしの嫁
    |┃      i゙ 、_  ゙,,,  ,, ' {     \ 
    |┃    丿\  ̄ ̄  _,,-"ヽ     \
    |┃ ≡'"~ヽ  \、_;;,..-" _ ,i`ー-     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |┃     ヽ、oヽ/ \  /o/  |    ガラッ



416 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:44:49.12 ID:iCnFl+Sh0
>>408
同志よ!愚かなファシスト共に是非とも鉄槌を!



414 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:33:10.43 ID:Bo6NrwuS0
純「…」


梓「ムギ先輩のCDですか?」


紬「ええ。唯ちゃんに頼まれの。」


梓「唯先輩がクラシックですか…?」


澪「良いインスピレーションにはなるとは思うんだが。
まあ、起きて聞いていればだけどな…」


梓「この二人のことですしね。」


415 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:39:57.62 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『とにかくしばらくは、このまま、ゆいの教育に…』


アドルフは和たちが入ってきても、まったく気にする素振りをみせない。
他人が自分を見ることができない、という状況にすっかり慣れきっているのだ。


純「…」


純(この人の顔どっかで見たことあるような…)


純(でも、問題はそこじゃない。
この外人の霊から、とてつもないほどのプレッシャーを感じる…)


417 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:45:21.47 ID:Bo6NrwuS0
純(それに…)


そして、再び生徒会室。
和と憂、そして純。


純「背は170ちょっと、かなり痩せてて、20代ぐらい、面長の、
目はすごく綺麗なブルーです。」


和「白人?」


純「はい。」


純「髪は七三わけのツーブロックで、
よれよれの疲れたスーツを着てました。」


418 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 15:56:17.88 ID:Bo6NrwuS0
和「そこまでわかるの??」


純「はい。けど、音声はうまく聞き取れませんでした…」


和「音声って…」


和「それに白人の…男性でいいのよね?」


純「はい。」


和「なんでそんなのが…」


和「…」


和「ごめんなさい、鈴木さん。やっぱり、あなたの話は…
はっきりいえばね、私は、そういうの全く信じない性質なの。」


421 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 16:04:35.85 ID:Bo6NrwuS0
純「…」


純「憂、唯先輩とあの外人の霊はどんな話をしてた?」


和(スルーされたかしら…)


憂「たぶん、芸術とか、歴史とか、政治とかの話。
おねーちゃんが普段絶対しないような…」


純「他には?」


憂「『アドルフ』って単語、多分人の名前だよね、それをよく口にしてた…」


和「!!!」


422 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 16:11:54.69 ID:Bo6NrwuS0
和「ちょ、ちょっと、ちょっと待ってよ…」


和「その名前…それと、唯が何週間か前に自慢してた鼈甲製の…」


憂「あっ!!」


和の額から、汗が少しにじり出てくる。


和「教科書、いえ、図書室のほうが…」


和「ちょっと出るけど、五分ぐらいで戻ってくるわ!」


426 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 16:22:45.74 ID:Bo6NrwuS0
そして五分もかからないうちに、再び戻ってくる和。
大きく息を切らせている。
手には一冊のカラー表紙の本、というかムック。


和「ハァ…ハァ…生徒会長なのに、廊下を…ダッシュしちゃったわ…」


和「えっと…えと…あ、ここ!」


和はその本を開き、あるページを純と梓に示す。


428 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 16:31:36.39 ID:Bo6NrwuS0
何人かの若い白人兵士が並んで写っている白黒写真。
そのうちの一人を指差す和。


和「もしかして、この男!?」


純「えと、うーん…この人のような…
私、トム・ハンクスと、カツラつけたブルースウィリスも見分けられないんです…」


和「た、たしかに他の人種の顔を区別するのは難しいけど…」


憂「和さん、この人って…」


430 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 16:41:10.32 ID:Bo6NrwuS0
和「そうよ…!」


和は本を閉じると、その表紙を二人に見せる。
40代の白人男性の白黒写真が表紙を飾っていた。
びちっと綺麗に固めた髪は1:9ぐらいの左分け。
鼻のすぐ下にある、いわゆる"チョビ髭"
表情は硬い、というよりは断固としたもの。


和「ドイツ国総統、アドルフ・ヒトラー。」


憂「え…」


純「生徒会長、この人のほかの写真は!?もっと見れば表情とかで…」


和「本の中にたくさんあるわよ…」


431 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 16:47:18.37 ID:Bo6NrwuS0
純「あ、この写真のこの表情…」


和「ヒトラーが何かに思いを馳せている際の写真ね…」


純「年かさは一回り以上違いますけど…
この何かに酔ったみたいな顔…」


純「あの外人の霊とそっくりです!」


和「…」


433 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 16:55:06.83 ID:Bo6NrwuS0
和「信じたくはないけれど…」


憂「あのピックが原因で!?」


純「ピックって?」


憂「えっとね…」


憂は純に事情を話す。


純「ヒトラーの親戚の遺品…」


434 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 16:55:48.81 ID:Bo6NrwuS0
すいません、ちょっと出かけます


435 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 17:02:24.60 ID:ebRNO2jE0
>>434
おk。気をつけて行ってきてねー



442 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 18:25:19.59 ID:Qtc2fm/qO
マルクスとケインズがあの世で出会い、そして激しい議論を始めた。
相反する思想を持った二人、やはり意見は合わなかったが、たった一つだけ結論の一致をみた話題があった。それは
「自分の理想を体現した国家とはどこだろうか?」という問いであった。二人とも
「日本」と答えたのである。



443 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 18:28:47.09 ID:7gHt3Yay0
世界史上で最も成功した社会主義国家は日本国


478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 20:54:21.16 ID:0jdMo2TqO
>>443
亀だけど、バブル時代の日本は完成に近い社会主義ってやつ?
それなら、俺もそう思う



451 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 19:29:05.28 ID:Bo6NrwuS0
すみません、再開します。


452 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 19:34:04.20 ID:Bo6NrwuS0
和「とにかく、もし本当にヒトラーが唯に憑いてるのなら、
唯と彼の会話の内容を確かめて、情報を集めないと…」


和(それに結局のところ、唯の精神疾患の可能性も高いし…)


憂「じゃあ、私の部屋の覗き穴からお姉ちゃんを…」


純(そんなもの作ってたの、憂…)


和「いえ、もっと確実な方法よ。
軽音部員たちにも協力してもらわないね、特に紬。」


454 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 19:40:21.50 ID:Bo6NrwuS0
そして、その三日後の夜。
その日は金曜日で、当然休日の直前。


唯「ごちそうさま!」


憂「おそまつでした♪」


何時もどおりの平沢家のダイニング。
平沢姉妹と霊が一体。


アドルフ『さて、ゆい。今日も読書をしよう。』


唯「よーし!」


455 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 19:46:02.21 ID:Bo6NrwuS0
憂「おねーちゃんは部屋に戻るの?」


唯「うん♪」


唯はここのところ、食事が終わるとすぐに自室に戻ってしまう。


憂「じゃあ、お風呂ができたら呼ぶね?」


唯「ほーい!」


憂「…」


憂(よし、行ったね…)


456 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 19:50:13.65 ID:Bo6NrwuS0
憂「…」


携帯電話を取り出す憂。


憂「梓ちゃん、入ってきていいよ。」


そう短く伝えると携帯電話を切る憂。


ガチャ…


平沢家の玄関が開く音がする。


457 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 19:55:10.97 ID:Bo6NrwuS0
律「お邪魔しまーすと…」


和「静かにね。」


律「はいはい。」


澪梓純「「「お邪魔します。」」」


紬「お邪魔します。憂ちゃん、とりあえず、
憂ちゃんのお部屋にいけばいいのよね?」


憂「はい。」


461 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 20:08:23.30 ID:Bo6NrwuS0
憂の部屋。
女の子の部屋に似つかわしくない機材が、所狭しと並べられている。


紬「今日の日中に斉藤が指揮を執って、
すべてセッティングしてくれたわ。」


律「で、なんで唯の部屋を監視カメラで覗くんだ??」


紬「あの憂ちゃんがどうしてもって言うから私も協力したんだけれど…」


和「それは、今から見てみればわかるわ。」


和(一昨日のうちに憂の部屋の覗き穴から唯のこと観察してたけど…)


和(本を読んだり、クラシックを聞きながら、
確かに、誰かと話しているようだった。)


和(唯の口から、唯が一生使わないだろう単語が、
ぽんぽん出てくるんですもの。)


464 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 20:14:47.52 ID:Bo6NrwuS0
紬「じゃあ、スイッチ入れるわね。」


紬「ポチッと。」


6台のモニターに、それぞれ別方向から、唯の部屋が映し出されている。


律「ベッドに座って、音楽聞いてるな。」


紬「唯ちゃんに今日貸してあげたベートーヴェンのCDだわ。」


澪「どっかで聞いたことがあるな…」


紬「交響曲第3番、『英雄』よ。」


466 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 20:18:58.86 ID:Bo6NrwuS0
和「紬、赤外線カメラをお願い。」


紬「わかったわ。」


律「はぁ!?なんで赤外線??」


和「とりあえずは見ていて頂戴。」


紬「ポチッと。」


紬が赤外線カメラのスイッチを入れる。
モニターの一つが、赤外線カメラ特有の暗さを帯びた映像に切り替わる。


468 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 20:24:33.29 ID:Bo6NrwuS0
和「特に移ってないようね…」


純「多分無理ですよ。そう言う番組で、テレビ局が雰囲気を出すために
赤外線カメラやサーモグラフィーを小道具として使っただけですから。」


純「実際には、そのどちらにも反応しないはずです。」


和「一応、念のためだったんだけどね…」


梓「あ、先輩が喋り始めました!」


律「え?」


澪「?」


469 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 20:29:28.11 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『どうだい、さっきの曲は?』


唯「すごく勇ましい、じゃなくて何かな…
鷹とか鷲をイメージしちゃう。」


アドルフ『良い例えだね、ゆい。』


アドルフ『さっきの曲は、ベートーヴェンが"コルシカの鷲"
ナポレオン・ボナパルトのために書いたものだ。』


唯「ナポレオンってあの、チンはこっかなり、の?」


アドルフ『それはルイ14世だよ。
下級貴族からフランス大革命を経て皇帝にまでなった男だ。』


アドルフは唯のボケも綺麗に受け流す。


472 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 20:39:51.64 ID:Bo6NrwuS0
唯「"成り上がり"ってやつ??」


アドルフ『そうだね。彼は非常に才能に恵まれていた。』


アドルフ『ただ…結局は、』


アドルフ『彼はその才能をうまく生かすことができなかった。』


唯「どうして?」


アドルフ『彼の夢、フランスの繁栄、これを追い求めることは正しかった。
彼の戦略もほぼ正しかった。』


アドルフ『だがね、彼は人材、人間を用いる際に手ひどい失策をしたんだ。』


473 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 20:46:40.41 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『彼は、部下として使ってはいけない人間をつかったし、
何より身内びいきだった。


アドルフ『無能な兄弟を諸王にしてしまった。他人が信用できなかったんだろうね。
さらに、すぐ下の弟は有能な男だったが、これを使いこなすこともできなかった。』


アドルフ『さらには、革命で追い出したはずの旧貴族と和解して、
自分たちの部下に、自分の宮廷のなかで、貴族の猿真似までさせた。』


アドルフ『フランスの旧貴族など、精神的に堕落しているし、
なにより皆、外国から金をもらっている売国奴だった。』


アドルフ『目標と手段、これはね、どちらも妥協してはいけないんだ。』


唯「ほう…」


476 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 20:49:08.98 ID:yQoWoT+Z0
ヒトラーさんも、お気に入りの将軍を解任→再任命→解任とかやってたからなあ


479 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 20:57:01.91 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『私は身内びいきをしなかった。』


アドルフ『そのために甥のハンスを、戦場で失ってしまった。
彼は勇気と知能に恵まれた、真にドイツ人らしい男だった。』

アドルフ『彼の父や兄とはまったくの別物だよ。
彼は私の誇りだ。』


そういうとアドルフは窓から外に顔を向け、空をじっと見つめた。
甥のことを思い出しているのだろうか。


唯『アドルフ、元気をだして。』


アドルフ『おお、ありがとう!心優しい、ゆい。』


※(ハンス・ヒトラーはソ連の収容所で傷病死している。
ヒトラーは、捕虜交換でなんとしても甥を取替えそうとしたが、かなわなかった。)


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